また山に行きたくなる。山の記録を楽しく共有できる。

Yamareco

記録ID: 1866792
全員に公開
山滑走
剱・立山

剱岳 池ノ谷右俣スキー

2019年05月26日(日) [日帰り]
 - 拍手
hayawata YSHR その他1人
体力度
6
1〜2泊以上が適当
GPS
11:13
距離
17.5km
登り
2,556m
下り
2,564m
歩くペース
とても速い
0.60.7
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

日帰り
山行
10:40
休憩
0:33
合計
11:13
0:26
36
スタート地点
1:02
1:02
198
4:20
4:31
192
7:43
7:52
6
7:58
7:59
3
8:02
8:14
205
11:39
ゴール地点
0.30 750m 馬場島
4.20 2210m 早月小屋
7.25 2900m 獅子頭
7.55 2999m 剱岳
8.05 2999m 剱岳発
8.40 2900m 獅子頭発
9.33 1800m 池ノ谷二股
11.18 930m 白萩取水口
11.39 750m 馬場島
天候 快晴
過去天気図(気象庁) 2019年05月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
馬場島 早月尾根登山口前
コース状況/
危険箇所等
早月尾根 シール歩行は1850mから。
池ノ谷ゴルジュ手前からツボ足下山。池ノ谷の雪は1050mで切れる。
早月尾根ナイトハイク。
2019年05月26日 03:41撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
5
5/26 3:41
早月尾根ナイトハイク。
気温が高いおかげで小屋までシールのみでいけた。
2019年05月26日 03:47撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
6
5/26 3:47
気温が高いおかげで小屋までシールのみでいけた。
奥大日岳が染まる。
2019年05月26日 04:49撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
7
5/26 4:49
奥大日岳が染まる。
毛勝三山も染まる
2019年05月26日 04:50撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
5
5/26 4:50
毛勝三山も染まる
小窓を左手に標高をあげる。
2019年05月26日 04:55撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
8
5/26 4:55
小窓を左手に標高をあげる。
早月小屋付近にて夜が明ける。
2019年05月26日 04:20撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
7
5/26 4:20
早月小屋付近にて夜が明ける。
小窓尾根の方から太陽が上がる。
2019年05月26日 04:20撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
8
5/26 4:20
小窓尾根の方から太陽が上がる。
早月小屋にてエナジー補充。
2019年05月26日 04:22撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
6
5/26 4:22
早月小屋にてエナジー補充。
小屋からはクトーを付けて行けるところまで。
2019年05月26日 04:43撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
8
5/26 4:43
小屋からはクトーを付けて行けるところまで。
月がまだ見えている。今日は快晴だ。
2019年05月26日 04:56撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
4
5/26 4:56
月がまだ見えている。今日は快晴だ。
標高2450m付近でアイゼンに変えて担ぐ。
2019年05月26日 06:00撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
10
5/26 6:00
標高2450m付近でアイゼンに変えて担ぐ。
毛勝三山もまだまだ雪は豊富で白い。
2019年05月26日 06:05撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
9
5/26 6:05
毛勝三山もまだまだ雪は豊富で白い。
緩んでいる場所はブーツラッセルとなる。
2019年05月26日 05:50撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
4
5/26 5:50
緩んでいる場所はブーツラッセルとなる。
気温が高いとは言っても雪壁は硬いので蹴り込んでいく。
2019年05月26日 06:39撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
10
5/26 6:39
気温が高いとは言っても雪壁は硬いので蹴り込んでいく。
山頂が近い。直下は雪が切れており、段差あり、日陰で硬いだろうから山頂からスキーは却下。日陰と日射の境界あたりからエントリーすることにした。これ以上日当たり斜面は上に伸びなかった。
2019年05月26日 06:56撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
10
5/26 6:56
山頂が近い。直下は雪が切れており、段差あり、日陰で硬いだろうから山頂からスキーは却下。日陰と日射の境界あたりからエントリーすることにした。これ以上日当たり斜面は上に伸びなかった。
岩尾根には雪はない。
2019年05月26日 07:04撮影 by  Canon EOS Kiss X7, Canon
8
5/26 7:04
岩尾根には雪はない。
立山室堂方面。雪の回廊が見える。
2019年05月26日 07:13撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
10
5/26 7:13
立山室堂方面。雪の回廊が見える。
獅子頭を超えればエントリポイントの鞍部に着く。
2019年05月26日 07:19撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
7
5/26 7:19
獅子頭を超えればエントリポイントの鞍部に着く。
鞍部から池ノ谷右俣を覗き込む。核心は見えない。
2019年05月26日 07:27撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
15
5/26 7:27
鞍部から池ノ谷右俣を覗き込む。核心は見えない。
鞍部にて。不要な装備はデポした。
2019年05月26日 07:34撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
1
5/26 7:34
鞍部にて。不要な装備はデポした。
鞍部から頂上に向けて出発する。身軽になった。
2019年05月26日 07:28撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
7
5/26 7:28
鞍部から頂上に向けて出発する。身軽になった。
トラバース。初冬に比べればへっちゃら。
2019年05月26日 07:35撮影 by  Canon EOS Kiss X7, Canon
12
5/26 7:35
トラバース。初冬に比べればへっちゃら。
ガレ場。
2019年05月26日 07:42撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
1
5/26 7:42
ガレ場。
上部の鎖は出ていた。
2019年05月26日 07:45撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
2
5/26 7:45
上部の鎖は出ていた。
別山分岐。
2019年05月26日 07:52撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
4
5/26 7:52
別山分岐。
剱沢。流石の雪量。
2019年05月26日 07:52撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
10
5/26 7:52
剱沢。流石の雪量。
剱沢を横目に登る。
2019年05月26日 08:00撮影 by  Canon EOS Kiss X7, Canon
5
5/26 8:00
剱沢を横目に登る。
後ちょっとでピーク。
2019年05月26日 07:55撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
10
5/26 7:55
後ちょっとでピーク。
着きました。下から7時間半。
2019年05月26日 08:05撮影 by  Canon EOS Kiss X7, Canon
21
5/26 8:05
着きました。下から7時間半。
父と記念写真。
2019年05月26日 07:55撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
6
5/26 7:55
父と記念写真。
山頂から見下ろす八ツ峰
2019年05月26日 07:59撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
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5/26 7:59
山頂から見下ろす八ツ峰
ヤツの奥は唐松とか後立山連峰。
2019年05月26日 08:01撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
9
5/26 8:01
ヤツの奥は唐松とか後立山連峰。
山頂は10人以上で賑わっていた。腰は下ろさず下山開始する。
2019年05月26日 08:00撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
12
5/26 8:00
山頂は10人以上で賑わっていた。腰は下ろさず下山開始する。
下山こそ慎重に。
2019年05月26日 08:16撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
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5/26 8:16
下山こそ慎重に。
ロープはザックからすぐ出せるように括り付けておく。
2019年05月26日 08:39撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
3
5/26 8:39
ロープはザックからすぐ出せるように括り付けておく。
池ノ谷二俣上部のオープンバーン。
2019年05月26日 08:41撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
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5/26 8:41
池ノ谷二俣上部のオープンバーン。
核心部に吸い込まれていく。
2019年05月26日 08:41撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
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5/26 8:41
核心部に吸い込まれていく。
そこそこの斜度だが緩んでいるので問題なし。
2019年05月26日 08:44撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
16
5/26 8:44
そこそこの斜度だが緩んでいるので問題なし。
出だしは快適に高度を落とす。
2019年05月26日 08:45撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
15
5/26 8:45
出だしは快適に高度を落とす。
眼前には剱尾根が迫る。奥には小窓尾根も。
2019年05月26日 08:48撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
18
5/26 8:48
眼前には剱尾根が迫る。奥には小窓尾根も。
なんとも贅沢な景色の中でのスキー。
2019年05月26日 08:49撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
16
5/26 8:49
なんとも贅沢な景色の中でのスキー。
稜線から滑ってきた。
2019年05月26日 08:51撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
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5/26 8:51
稜線から滑ってきた。
小尾根を挟んで右へ。左は多分アウト。
2019年05月26日 08:52撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
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5/26 8:52
小尾根を挟んで右へ。左は多分アウト。
剱尾根の迫力が凄まじい。
2019年05月26日 08:52撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
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5/26 8:52
剱尾根の迫力が凄まじい。
いよいよ核心に突入。
2019年05月26日 08:55撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
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5/26 8:55
いよいよ核心に突入。
日陰になっており狭く急。一部氷結あり。
2019年05月26日 08:57撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
20
5/26 8:57
日陰になっており狭く急。一部氷結あり。
喉は狭い。おまけに中央部には岩が露出していた。
2019年05月26日 08:57撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
5
5/26 8:57
喉は狭い。おまけに中央部には岩が露出していた。
下ばかり見ていては怖いので、目の保養に上をみる。
2019年05月26日 09:00撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
14
5/26 9:00
下ばかり見ていては怖いので、目の保養に上をみる。
大魔人さんも続く。
2019年05月26日 09:02撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
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5/26 9:02
大魔人さんも続く。
ジリジリと標高を落とす。全身に力が入る。
2019年05月26日 09:06撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
7
5/26 9:06
ジリジリと標高を落とす。全身に力が入る。
見た目以上に難儀した。片手にウイペットを刺しながら横滑り。核心は標高差にして100m。
2019年05月26日 09:10撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
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5/26 9:10
見た目以上に難儀した。片手にウイペットを刺しながら横滑り。核心は標高差にして100m。
下にいけば深い溝。デブリの走路。
2019年05月26日 09:17撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
14
5/26 9:17
下にいけば深い溝。デブリの走路。
深い溝を横断。
2019年05月26日 09:14撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
2
5/26 9:14
深い溝を横断。
左手の谷からやってきた。
2019年05月26日 09:20撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
5
5/26 9:20
左手の谷からやってきた。
ここまでくれば安全地帯。
2019年05月26日 09:22撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
4
5/26 9:22
ここまでくれば安全地帯。
核心を終え万年雪マークは快適。
2019年05月26日 09:24撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
19
5/26 9:24
核心を終え万年雪マークは快適。
スベスベ。
2019年05月26日 09:30撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
18
5/26 9:30
スベスベ。
剱岳の秘境部にてスキー。
2019年05月26日 09:31撮影 by  Canon EOS Kiss X7, Canon
18
5/26 9:31
剱岳の秘境部にてスキー。
池ノ谷二俣まで下りてきた。
2019年05月26日 09:31撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
20
5/26 9:31
池ノ谷二俣まで下りてきた。
緊張から解き放たれ叫びながらスキーしていたら顔からこけた。
2019年05月26日 09:34撮影 by  Canon EOS Kiss X7, Canon
18
5/26 9:34
緊張から解き放たれ叫びながらスキーしていたら顔からこけた。
池ノ谷はどちらを行っても深い渓谷。
2019年05月26日 09:34撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
17
5/26 9:34
池ノ谷はどちらを行っても深い渓谷。
左俣を詰めれば三ノ窓。こちらは直線的な回廊。ここもいつか滑ってみたい。
2019年05月26日 09:38撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
6
5/26 9:38
左俣を詰めれば三ノ窓。こちらは直線的な回廊。ここもいつか滑ってみたい。
左俣の最終地点。三の窓が見えた。左股はまっすぐな回廊。
2019年05月26日 09:47撮影 by  Canon EOS Kiss X7, Canon
14
5/26 9:47
左俣の最終地点。三の窓が見えた。左股はまっすぐな回廊。
池ノ谷ゴルジュに近くにつれ、滝が出てきたが際どく雪が繋がっていた。
2019年05月26日 09:46撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
13
5/26 9:46
池ノ谷ゴルジュに近くにつれ、滝が出てきたが際どく雪が繋がっていた。
泥デブリンは担いでいく。
2019年05月26日 10:10撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
3
5/26 10:10
泥デブリンは担いでいく。
上から見た険悪な池ノ谷ゴルジュ。雪で埋まっていて助かった。
2019年05月26日 10:17撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
13
5/26 10:17
上から見た険悪な池ノ谷ゴルジュ。雪で埋まっていて助かった。
下から見た泥まみれゴルジュ。えげつない。落石には会わなかった。
2019年05月26日 10:20撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
13
5/26 10:20
下から見た泥まみれゴルジュ。えげつない。落石には会わなかった。
ゴルジュを過ぎたら雪は切れ、渡渉。雪解け水が冷たくキンキン。
2019年05月26日 10:55撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
15
5/26 10:55
ゴルジュを過ぎたら雪は切れ、渡渉。雪解け水が冷たくキンキン。
ブーツでヘツリは難しい。シューズで突破した大魔人さんの手を借りて突破した。
2019年05月26日 10:55撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
3
5/26 10:55
ブーツでヘツリは難しい。シューズで突破した大魔人さんの手を借りて突破した。
何度か渡渉して作業道にでた。
2019年05月26日 11:09撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
7
5/26 11:09
何度か渡渉して作業道にでた。
生きてて良かった。池ノ谷。お疲れ様でした。
2019年05月26日 11:46撮影 by  NIKON D7000, NIKON CORPORATION
36
5/26 11:46
生きてて良かった。池ノ谷。お疲れ様でした。
1週間後毛勝南峰から滑降ラインを写真に撮った
2019年06月02日 07:48撮影 by  Canon PowerShot G7 X Mark II, Canon
4
6/2 7:48
1週間後毛勝南峰から滑降ラインを写真に撮った

装備

共同装備
特筆する装備
ロープ×2
ハーネス ピッケル 登攀具

感想

5/29 同行者(大魔人さん)の写真も追記しました。

下界は真夏日の日曜日。今日は剱岳の池ノ谷右俣スキーに出かけた。今回のパーティは剱岳をこよなく愛し剱のメジャーなコースは滑り尽くしている父と剱の登攀専門の大魔人そして僕である。池ノ谷は剱尾根など登攀のアプローチによく使われるようだが、滑降の記録は少ない。二俣から上、特に右俣の滑降記録はあるにはあるが詳しいものががないので未知。それだけでメンタルが削られる。剱岳山頂からの滑降ルートといえば剣沢に落ちる大脱走ルンゼと池ノ谷の2つだろう。大脱走ルンゼは以前に滑降歴があるが、池ノ谷はそれよりも条件は難しい。いけぬ谷が訛って付けられてとも言われる池ノ谷。コース概要は早月尾根ー頂上ー池ノ谷右俣ー下山とシンプル。今回の挑戦にあたり重要なのが天候と気温である。右俣は上部のオープンは日当たりが良いので太陽が出れば緩むが、中間部は日が当たらず日陰となる為、気温が高いことが条件であった。万が一の事に備え、普段のスキーでは持たないロープ、アックス、ハーネスや登攀具を用意した。

ひたすら早月尾根を登っていく。0時半スタートだが、気温は10℃を超え、汗が滴り落ちる。早月尾根上は水は取れないのでいつもより多めに水分を担ぐ。重荷+高温でこの急登は拷問だ。父と私は兼用靴で、大魔人は兼用靴を背負ってトレッキングシューズで黙々と標高を上げた。どこから雪が出るか、部分的にある雪渓で時折冷たい空気を感じる。標高1800mくらいでやっと雪が繋がった。気温は高いので早月小屋までクトーなしのシールのみで登った。早月小屋にはテントが一張り。すでに出発していた。下の駐車場にはたくさん車が停車していたが、登っているパーティーは少ないようだ。
早月小屋でまともな休憩。これからが本番、エネルギージェルを補給しておく。気温は高くても早月小屋からはさすがに硬くなったのでクトーを付けていく。下から九州から来て初めて剱岳に登る若者も小屋にきた。若者の足元はトレッキングシューズでノーアイゼンノーピッケルで頂上を目指すという。とにかくご無事で行かれてくださいと一言。池ノ谷を控えている僕らは人のことを気にする余裕などない。
標高2450mくらいから尾根上で雪が切れている箇所もあったので早々にアイゼンに替えた。グズグズラッセルを強いられたが大魔人さんが先頭でルートを伸ばしていった。徐々に山頂に近づき池ノ谷はどこから入るか考えなければいけない。山頂からはどうか。直下は雪が切れており、小尾根が段差になっている箇所がありそうだ。おまけに直下は日が当たっていない。あんな急斜面では途中でロープを出すのは不可能で、残念だが山頂からは却下とした。では標高2900mの獅子頭の鞍部からはどうか。鞍部から落ちるオープンバーンは、丁度日が当たる境界になっており緩んでいそうだった。それより上の斜面は日陰だったので迷わず2900mからエントリーすることとした。鞍部でスキー等不要な荷物はデポした。別山尾根からは沢山の登山者が上がっている。こちらの方が人気なのか。アイゼンのまま最後のガレ場を落石をしないように慎重に登る。というより岩でアイゼンの歯が鳴くのでそっと足を置いた。山頂にはすでに10人くらいが寛いでいた。僕らは荷物をおろす事なく、腰も落とす事なく写真を撮ったらすぐに山頂を後にした。

とにかく池ノ谷右俣のオープンバーンの先はどうなっているのか。核心部は見えない。滑り出す直前、足がすくんで攣った。何があっても良いようにハーネス、登攀具を装着し、ロープもザックに括り付けて意を決して滑り出した。上部は広く、緩んでいるので問題なかった。標高2650mあたりから細くなる。事前に右右に滑ると良いと情報をもらっていた。情報通り二手に別れた微沢は小尾根から右を選択する。剱尾根が正面に迫る。物凄い圧迫感だ。核心部は2550mから標高差で100m。幅は10mくらいはあるが、真ん中は岩が出ている。走路は分断されている。しかも所々、氷化しているのでターンはできない。絶対転倒することは許されない。片方のウィペットは常に刺しながら横滑りでジリジリと慎重に高度を落とした。滑り終えて安全地帯で呼吸を整えた。上からずっと緊張していたので気づいたら喉がカラカラになっていた。万年雪マーク部分の滑降は緊張から解放され、自然と声が出た。雄叫びをあげて綺麗な面のスキーを楽しんだ。気が緩んで顔から雪面に転倒する場面もあり要反省。池ノ谷ゴルジュ手前で雪が泥に覆われてきたので板を担いだ。ゴルジュ通過もこの山行の懸念事項だったが、雪が残っており難なく通過することができた。落石に会わずにホッとした。両サイドに積雪でもあろうものなら落石の巣だっただろう。
ゴルジュを過ぎたら、雪が切れてしまったので何度か渡渉を繰り返した。雪解け水たっぷりでかなりの水量だったが、それよりも水が冷たくて足の感覚が鈍った。最後は作業道に合流して余韻に浸りながら下山。

二度目はない、山行が終わった。

池ノ谷(行けぬ谷)ゴルジュから始まるこの険悪な谷は左俣を詰めれば三の窓に出る。右俣を詰めれば長次郎の頭のコルや山頂にせり上がる。左俣を詰める人は多いが右俣を詰める人は殆どいない。右俣を滑走した人も過去に数えるくらいだろう。劔岳の山頂から滑走するより難易度は高い。情報がほとんど無く謎めいた右俣、劔をこよなく愛して子供の名前にまでした自分にとってこの右俣は人生の課題と言っても過言ではなかった。

いつかは滑走しなければずっと思い続けてきたがその時がきた。週末は異常高温の絶対快晴が確約されるまだ雪は多い、行くしかない!以前から地図を眺めてこのコースしかないだろうと探っていた。日の当たらないルンゼが凍っていたら滑れないから万が一に備えてロープや登攀具も全て揃えよう。メンバーも岩のスペシャリストが揃いもうお膳立てが揃った。

昨日はまさに狙い通り雪は緩み早月尾根から何度も眺めてきた池ノ谷へスキーで吸い込まれるように滑走した。これが人生、墓場にも自慢して持っていけるそんな一日になった。長年恋い焦がれた彼女に再開したそんな一日でもあった。

無事右俣を通過して本谷に合流しても池ノ谷ゴルジュの通過が待っている。ここを三ノ窓から滑走して通過したのはもう10年以上も前、怖かった、地獄のような光景しか覚えていない。昨日は滝も出ていてマジで緊張したが流石に剱岳、ゴルジュに落ちてきた多量のデブリで無事白萩川に合流できた。

もう何も望まない、本当に完全燃焼できた。生きてて良かった。そんな一日であった。

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コメント

唖然です。
こんばんわ。はじめまして。
ただただ驚くだけです。

学生の時、三の窓に天泊してチンネを登りましたが、池の谷をスキーで滑降する方がいらっしゃるとは、、、。

時々、テレビで見ます。世界的に有名なプロスキーヤーかボーダーが垂直に近い斜面を滑降する場面を。自分はスキーはしないので分かりませんが、池の谷滑降はインターナショナルのレベルに思えるのですが、、、。
唖然。言葉が出ません。

皆様の益々のご活躍を祈念しております。
2019/5/28 20:50
Re: 唖然です。
fujikita様 メール有難うございます。
スキーは雪質が全てで緩んでいればかなりの急斜面でも滑れます。
ただ池ノ谷右俣上部は日当たりが悪くて雪が緩む判断が非常に難しいです。
また全く情報がない滑降だったので神経をすり減らしました。
まあ一度滑ればもう二度目はないでしょう。
これからも安全第一で精進いたします。
2019/5/30 7:45
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