抜戸岳 穴毛谷滑降
- GPS
- 07:22
- 距離
- 14.5km
- 登り
- 1,774m
- 下り
- 1,794m
コースタイム
06:15 杓子平
07:40 抜戸岳
08:30 四の沢出合
09:10 双六・笠方面登山口
天候 | 快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2020年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
左俣林道も笠新道の北の沢筋登りも、穴毛谷の滑降もすべて雪崩のリスクが高い。 相当条件が良くなければお勧めできない。 |
その他周辺情報 | 下山後の温泉は荒神の湯。食事は高山セブン。 |
写真
感想
春は良い。春になると、行動範囲が広がる。この日は足を伸ばして抜戸岳へカタヤさんとパクとで出かけた。気合が入っていたので予定の出発時間よりもかなり早くついてしまったが、ちょうどカタヤさんも車から出てきたのでまだ準備中だったパクを置いて出発した。林道には薄っすら新雪のおかげで車から板を使えるが、時間が経てばすぐに消えてしまう程度。おしゃべりしながらあっという間に1時間林道を歩いて、いつの間にか笠新道の登山口を過ぎていた。そろそろ尾根に取り付くがまだ、パクはこない。ヒトココでサーチしたが圏内ではなかった。最初に取り付いた斜面が藪&新雪の下がガリで難儀すること間違いなかったので、カタヤさんと協議して引き返して禁断のデブリ跡がある広い沢を攻めることにした。引き返したところでパクと合流。
固いデブリの上の新雪はスリッピーなので最初からクトーを着けて高度をズンズンあげた。シールの効きもバチ効きとは行かずに疲れる登りだった。適当なところで急斜面を避けるように右手にトラバース気味に登った。雪は安定して恐怖感はなかったが、白い斜面のトラバースは雪崩に遭った焼岳以降、少しトラウマになっている。
空には満点の星空が広がっている。今日はThe Dayだ。時間が経つと大キレットから朝日が登った。素晴らしい光景で何度も足が止まってしまう。明るくなるとダイヤモンドダストの現象を見ることもできた。稜線手前で初めての休憩。これが最初で最後の休憩だった。穴毛谷を滑ると話していたのでモタモタしていたらガスに撒かれて滑れなくなる。来た道は帰るのは厄介だ。
さて抜戸までの稜線を歩いている時、ふと頂上斜面を見上げたら雪崩の跡が確認できた。さっき見たときはなかったように思うが、どうやら歩いている最中に雪庇の下からやはり雪崩が起きたみたいだ。要注意だな。先鋒のパクが雪庇の弱点を見つけツボで取り掛かろうとするが胸以上の高さのラッセルに断念。次に自分が雪庇のないところまでスキーで緩く登ろうとした時、雪面が割れ、雪崩た。半分、雪崩れることは想定済みで、流されながらすぐに絶対止まるだろうと思っていたが気持ち良いものではない。自己犠牲になり、道は拓けた。雪崩も胸ラッセルもなくなった。板を背負いツボで大将のカタヤさんが雪庇を乗り越して無事突破。山頂は見事な景色で言葉はいらない。
帰りのスキーは雪庇からジャンピングエントリー。新雪に覆われた杓子平はまさにメローな斜面。以前、残雪期に来たときは縦溝で試練だったのでいつかパウダーを下まで滑ってみたいと思っていたので念願が叶った。ザイテングラートも残雪期の時よりも斜度は感じず、楽しくパウダーを滑ることができた。大滝から下は大きな沢から流れてきた巨大デブリに覆われており気が引き締まる。やはり容易に入ることができない場所であることを再認識した。終わってみれば7時間の快速山行で非効率な部分は全くなかった。
2時新穂高発ということで1時半まで寝ていた。アラームで目を覚まして起き上がると2人は元気に出発していった。あかんわ。みんなと行くのは久しぶりだったのでフライングシステムを忘れていた。まあラッセル・ルーファイがあるから慌てなくても追いつけるだろう。落ち着いて支度をして30分遅れで僕も出発。今日はカタヤさん、兄ちゃん、僕の3人で抜戸岳へ。この3人の構成は初めてだ。パーティ全員アタッカーじゃないか(個人の感想です)。2人のトレースを追いかけるとワサビ平小屋の手前で兄ちゃんの灯りが見えた。はて予定していた尾根はもっと奥のはずだが。予定の尾根は雪が少なく激ヤブで、ガリガリの上にパラッと雪が載っていて酷いモンなので引き返してきたらしい。見上げる沢筋はデブリの壁。はるか上の方に番長の灯りが見える。エェーここ登っちゃうんですかー。
禁断のデブリアセントでぐいぐい高度を上げてゆく。下を見ると吸い込まれそうだ。かなりの斜度にチビりそうになる。2,000mほどで予定していた尾根にトラバースした。ヤブは埋まって真っ白な快適な尾根だ。振り返ると月明かりに照らされた槍穂のシルエットが美しい。5時を過ぎると東の空が明るくなってきた。遠くに乗鞍が見える。ガスが上がってきたり消えたりして忙しい。杓子平に着くとようやく穂高の向こうから太陽が登ってきた。日が出ても寒い。気温は-15度だった。目指す抜戸岳はすぐそこだ。一休みしてガッチリ着込んだら再出発。カタヤさんがイチゴ大福を1個分けてくれた。うめぇー。今日の行動食はもらったイチゴ大福1個で十分だった。抜戸岳の頂上はすぐそこだが最後ほんの5m, 雪庇をどうやって突破するか。最初は僕が適当に取り付いてみるもハングしていて歯が立たず。次に兄ちゃんが低いところから左手に巻いて斜度の緩いところを狙って行くが、ボンッ!という音と共に30cmほどの新雪の層が崩れて50m流されていった。こええー。兄ちゃん50m登り直し。新雪の層が流されたので下の固い層が表れて登りやすくなった。兄ちゃんの尊い犠牲のおかげでカタヤさんが斜面を蹴り込んで雪庇を殴って壊してピークに出た。さすがはマイスター番長。難所はやっぱりこの人だ。山頂からは360度の大展望。南には笠、東は槍と穂高、遠く西には白山、北は黒部五郎や薬師に双六に鷲羽に水晶。雲ひとつない青空だ。いつまでも眺めていたい。
シールを剥がしたら山頂からGO. 下りは穴毛谷から。登りで使ったデブリ沢ではなくて安心。2人は一度入ったことがあるが僕は初めてなので緊張した。まずは杓子平に向かって駄々っ広い斜面をやりたい放題。素晴らしい。雪も斜度も景色も今シーズン一番良かった。幸せ。杓子平まで楽しんだら緊張の穴毛谷へ。谷は中々の斜度だが昨日のパウダーがたっぷり溜まっていて超快適。エッジに命を預けるとかそういう危ないところは無かった。残雪期だと斜度が増してガリガリも表れかなりシビれる滑降となるらしい。パウダーを快適にガンガン落としていくと真ん中はデブリだらけになってきた。左に右に避けながら高度を落とす。あっという間に1,200m落として四の沢出合いまで来たらもう安心。その後は際どく雪の乗った沢をうまいこと繋ぐ。2箇所、渡渉のため板を脱いだ。ラストは激ヤブを突破して左俣林道に合流。山頂から1時間で下りてきた。スキーはええ。行動時間は7時間の速攻だった。時刻はまだ9時過ぎ。今日は昼からのんびり出来そうだ。荒神の湯で汗を流したらのんびり伊賀まで帰ってきた。帰宅後は洗濯に装備のメンテナンスに色々と下界の用事を済ませた。
速い。雪良し。景色良し。天気が崩れる前に華麗にエスケープ。完璧だ。今日は今シーズントップと言っても良い完璧な山行だった。Say Tamalunch.
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そういえばカタヤさんに「ぱくうかん消えてるんだけどどうしたの?」と問い合わせた人がいるらしい。僕のブログは書く時間を捻出できないのでやめました。今後の僕の活動はTwitter(https://twitter.com/pakumin1898)でどうぞ。
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