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Yamareco

記録ID: 3186744
全員に公開
アルパインクライミング
白山

火の御子峰 17時間の格闘

2021年05月15日(土) [日帰り]
 - 拍手
katatoshi その他1人
体力度
6
1〜2泊以上が適当
GPS
16:12
距離
29.0km
登り
2,988m
下り
3,413m
歩くペース
とても速い
0.60.7
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

日帰り
山行
0:18
休憩
0:00
合計
0:18
23:41
18
23:59
宿泊地
日帰り
山行
13:46
休憩
1:59
合計
15:45
0:09
0:12
28
0:40
0:40
21
1:01
1:07
14
1:21
1:21
68
2:29
2:44
38
3:29
3:30
3
8:24
9:34
214
13:08
13:12
12
13:24
13:25
21
13:46
13:50
8
13:58
14:00
1
14:01
14:01
6
14:30
14:32
9
14:46
14:46
12
14:58
14:58
4
15:02
15:02
6
15:08
15:09
13
15:22
15:24
15
15:39
15:42
11
15:53
15:53
1
15:54
ゴール地点
天候 ピーカンのちホワイトアウト
過去天気図(気象庁) 2021年05月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車 自転車
コース状況/
危険箇所等
市ノ瀬〜別当出合
週末は工事車両はいなくて安心安全。

別当〜白山
雪解けが進む1650m辺りは暗いとルートが不明瞭、残雪が多くなるとどこでも歩ける。黒ボコ、エコーライン共トレースがあり迷うことはない。

大汝峰〜仙人谷〜火の御子峰〜地獄谷
大汝から先はノートレース、雪が緩んでいれば滑落の危険はない。
火の御子峰にはベテラン経験者でも十分な装備がなければ立ち入ってはならない。進退窮まれば帰還することも困難になり遭難事故の恐れがある。
本日1枚目は甚之助小屋前のベンチ。
2021年05月15日 01:01撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
4
5/15 1:01
本日1枚目は甚之助小屋前のベンチ。
長い夜を黙々と歩いていく。
2021年05月15日 02:07撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
4
5/15 2:07
長い夜を黙々と歩いていく。
明るくなるころには仙人谷。
2021年05月15日 04:29撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
3
5/15 4:29
明るくなるころには仙人谷。
今日も剣が峰が美しい。
2021年05月15日 04:30撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 4:30
今日も剣が峰が美しい。
3日前より滝が出てる。
2021年05月15日 05:02撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
5
5/15 5:02
3日前より滝が出てる。
ドンドン高度を下げていく。
2021年05月15日 05:04撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 5:04
ドンドン高度を下げていく。
仙人谷標高1700mの出合。
ここから2004峰ルンゼに向かう。
2021年05月15日 05:13撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 5:13
仙人谷標高1700mの出合。
ここから2004峰ルンゼに向かう。
地獄が近づいてくる。
2021年05月15日 05:26撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 5:26
地獄が近づいてくる。
ルートは必ずある。
2021年05月15日 05:31撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 5:31
ルートは必ずある。
登攀具をまとい行くべ。
2021年05月15日 05:40撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 5:40
登攀具をまとい行くべ。
記録はない、誰も知らない、人類初の取りつき。
2021年05月15日 05:40撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 5:40
記録はない、誰も知らない、人類初の取りつき。
早くも険悪、行くしかない。
2021年05月15日 05:45撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 5:45
早くも険悪、行くしかない。
際どい登攀が続く。
2021年05月15日 05:49撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 5:49
際どい登攀が続く。
確保しながら進んでいく。
2021年05月15日 05:49撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 5:49
確保しながら進んでいく。
どこまで雪が繋がっているのか。
2021年05月15日 05:58撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 5:58
どこまで雪が繋がっているのか。
クレパスの下は狭くて深いルンゼ。
2021年05月15日 06:02撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 6:02
クレパスの下は狭くて深いルンゼ。
ハーケンを打って登攀していく。
2021年05月15日 06:12撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 6:12
ハーケンを打って登攀していく。
せり上がる地獄尾根。
2021年05月15日 06:25撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 6:25
せり上がる地獄尾根。
深いルンゼから脱出。
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深いルンゼから脱出。
かろうじて残る雪を繋いで谷を越えていく。
ルーファイを誤ると進退窮まる。
2021年05月15日 06:25撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 6:25
かろうじて残る雪を繋いで谷を越えていく。
ルーファイを誤ると進退窮まる。
ドンピシャ、尾根までのルートがあった。
2021年05月15日 06:35撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 6:35
ドンピシャ、尾根までのルートがあった。
究極のトラバース、上も下もマジやばい。
支点が取れないからフリーで行くしかない。
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究極のトラバース、上も下もマジやばい。
支点が取れないからフリーで行くしかない。
地獄尾根に乗り上げた。
2021年05月15日 06:41撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 6:41
地獄尾根に乗り上げた。
強烈な藪と裸地のミックス。
2021年05月15日 06:42撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 6:42
強烈な藪と裸地のミックス。
下を覗くとこんな感じ。
2021年05月15日 06:43撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 6:43
下を覗くとこんな感じ。
この先の攻略もムズイ。
2021年05月15日 06:49撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 6:49
この先の攻略もムズイ。
ここから懸垂して攻略していく、リベンジの始まりだ。
2021年05月15日 06:59撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 6:59
ここから懸垂して攻略していく、リベンジの始まりだ。
裸地は比較的安心だが足元から崩れていく。
もちろん片足分の幅しかない。
2021年05月15日 07:07撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 7:07
裸地は比較的安心だが足元から崩れていく。
もちろん片足分の幅しかない。
景色を眺める余裕はないので、写真を撮って後で楽しもう。
2021年05月15日 06:52撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 6:52
景色を眺める余裕はないので、写真を撮って後で楽しもう。
必ずルートがある。
2021年05月15日 07:42撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 7:42
必ずルートがある。
2004峰ルンゼも地獄尾根も単独では絶対に攻略できない。
2021年05月15日 07:55撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 7:55
2004峰ルンゼも地獄尾根も単独では絶対に攻略できない。
核心部ではロープをまとめることができない、
崖に垂らすしかない。
2021年05月15日 08:08撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 8:08
核心部ではロープをまとめることができない、
崖に垂らすしかない。
これが地獄尾根。
2021年05月15日 08:15撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 8:15
これが地獄尾根。
トンビ岩。
2021年05月15日 08:06撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 8:06
トンビ岩。
1丁目1番地。
2021年05月15日 08:06撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 8:06
1丁目1番地。
リベンジ完了して火の御子峰を目指す。
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リベンジ完了して火の御子峰を目指す。
地獄でポーズ。
最後の核心、ここを超えればピーク。
2021年05月15日 08:16撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 8:16
最後の核心、ここを超えればピーク。
振り返る。
2021年05月15日 08:20撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 8:20
振り返る。
支点を作り登攀開始。
2021年05月15日 08:43撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
8
5/15 8:43
支点を作り登攀開始。
4年前よりさらにボロボロ。
2021年05月15日 08:47撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 8:47
4年前よりさらにボロボロ。
ロープが流れやすいようにしなければならない。
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ロープが流れやすいようにしなければならない。
攻略終了。
ビレイして登ってきてもらう。
2021年05月15日 08:57撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
6
5/15 8:57
ビレイして登ってきてもらう。
ピークへ向かう。
2021年05月15日 09:06撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 9:06
ピークへ向かう。
気を抜かずに。
2021年05月15日 09:08撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 9:08
気を抜かずに。
絶景を堪能。
2021年05月15日 09:11撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 9:11
絶景を堪能。
仙人谷からせり上がっている。
2021年05月15日 09:12撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 9:12
仙人谷からせり上がっている。
着いたぜ、
2021年05月15日 09:13撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 9:13
着いたぜ、
ベイビー。
2021年05月15日 09:14撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 9:14
ベイビー。
国内屈指の難関峰。
2021年05月15日 09:15撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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国内屈指の難関峰。
地獄谷からもせり上がっている。
2021年05月15日 09:20撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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地獄谷からもせり上がっている。
60m懸垂で地獄谷に下りていく。
2021年05月15日 09:33撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 9:33
60m懸垂で地獄谷に下りていく。
落石の雨あられ。
2021年05月15日 09:41撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 9:41
落石の雨あられ。
懸垂が終わりルンゼに入る。
2021年05月15日 10:14撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 10:14
懸垂が終わりルンゼに入る。
下を見るとこんな感じ、まだまだ気を抜けない。
2021年05月15日 10:16撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 10:16
下を見るとこんな感じ、まだまだ気を抜けない。
ルンゼ下部。
2021年05月15日 10:23撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 10:23
ルンゼ下部。
安全地帯、地獄谷に合流。
2021年05月15日 10:23撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 10:23
安全地帯、地獄谷に合流。
さて、登り返しだ。
2021年05月15日 10:34撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
5
5/15 10:34
さて、登り返しだ。
さらば、火の御子峰。
2021年05月15日 10:46撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 10:46
さらば、火の御子峰。
ありがたい水場。
2021年05月15日 10:54撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 10:54
ありがたい水場。
火の御子峰より高度が上がっていく。
2021年05月15日 11:18撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
6
5/15 11:18
火の御子峰より高度が上がっていく。
天気が怪しくなってきた。
2021年05月15日 12:02撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
6
5/15 12:02
天気が怪しくなってきた。
もう山頂部は雲の中。
2021年05月15日 13:15撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 13:15
もう山頂部は雲の中。
安定のホワイトアウト。
2021年05月15日 14:00撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 14:00
安定のホワイトアウト。
黒ボコの下で雲の中から出た。
2021年05月15日 14:47撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 14:47
黒ボコの下で雲の中から出た。
不動滝は豪快な流れだった。
2021年05月15日 15:18撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 15:18
不動滝は豪快な流れだった。
若い外人さんとバトルをする。
2021年05月15日 15:32撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 15:32
若い外人さんとバトルをする。
下ザーン。
2021年05月15日 15:39撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 15:39
下ザーン。
バトルを制した、お疲れさん。
2021年05月15日 15:51撮影 by  TG-5 , OLYMPUS CORPORATION
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5/15 15:51
バトルを制した、お疲れさん。

装備

個人装備
登攀道具一式<br />アブミ2 捨て縄15m 60mロープ アックス バイル ウィペット スノーバー1 アイゼン
共同装備
ハーケン10 鉄筋棒10 リンクカム 30mロープ

感想

男はやるときにやらねばならない。そう、リベンジを誓っていたらいつかは攻略しないといけない。4年前にYSHRさんとなにわ君とで力を合わせて登頂した火の御子峰、日本国内でも登頂が困難なピークに立てて幸せだった。しかしその2週間前に火の御子峰の南にある2004峰で敗退してピークに行けずリベンジを誓っていた。やるしかないだろう、念入りな準備と計画…、若者と2人で白山に新たな記録を作りに行こう。

4月に登攀道具を歩荷して室堂にデポしてある、そして3日前にスキーを使って仙人谷を滑降し下見をした。2004峰ルンゼは見えないが取りつきまでは安全に行けることを確認した。深夜23時に市ノ瀬からチャリリン開始、気合が入っているからガシガシ漕いでいく。荷物は重いが35分で別当に到着、若者は5分遅れだった。暖かい夜なので大汗かいても大丈夫、すぐにスタートした。3日前より雪解けが進み登山道は相変わらずの不明瞭、藪を漕いで登った。

雪が出てくれば後はガシガシ行くだけ、しかし気温が高いからザク雪でプチラッセルとなった。甚之助上に先行者のライトが見えた、いったい何時に出てどこに行くんだろう。黒ボコ方面に進んでいった。僕たちはエコーラインから行く。ずっとラッセルなのでしんどいが暗闇の中を突き進んでいく。
2時半に室堂に着きデポしておいた登攀具をザックに詰め込んだ、メチャ重い、室堂から先もラッセルなので拷問でした。
山頂はスルーして大汝峰鞍部に向かう、振り返ると先行者は後続になっていた、エコーラインのほうが早かったみたいだ。

暗闇の鞍部に着きお花松原まで急斜面を下降する、ここも雪が緩んでいて靴上ラッセルとなった。下りなのでマシだけど今日はスパッツを持ってきていないから靴に雪が入ってとても不快だった。サクッと下降して薄明るくなってきた仙人谷を下降する。ここも雪は緩んでいるが超急斜面なのでアイゼンを履いていく。1700mまで下って2004峰ルンゼに向かう、ここに立ち入った人はいないだろう。
地獄尾根は地形図と現地では全く違うし行ってみないとわからない部分が多い、このルンゼも同じでルンゼ入り口の地形図は岩マークになっている。下から観察する、左右にルンゼがありそうだ。雪が繋がっていそうな左ルンゼから行くことにした。

登攀具を身に着け狭いルンゼに取りついた、いきなり核心、雪が切れていた。アイゼンの爪に岩の凹凸にひっかけクライミングをしていく、岩でのアイゼンワークが出来なければ行けないルートだ。若者にはロープを出して登ってきてもらう、今日はあなたがいなければ記録は達成しないんだ。
次から次へと核心が現れる、大きな口を開けたシュルンドを覗き込むと深く切れ込んだ細いルンゼの底が見えていた、とても険悪だ。さてこれどうやって進もうか、飛び道具はたくさん持ってきているので攻略できた、これ準備不足ならここで敗退だった。
この先は雪が繋がっている、ラッキーだけど安心できない。この急傾斜は半端ではない、絶対に滑落できないし上からの落石も要注意だ。監視しながら交代で高度を上げていく、ようやく狭いルンゼから出ると岩峰にぶち当たった。想定内だけど現実はとても厳しくルーファイミスは許されない。
右は目的のコルだけどわずかに残る雪を繋いで際どいトラバースをして左から行く、ルートはここしかない、岩峰を回り込むとルートはあった、やはり左が正解であった。目的のコルが見えているが超いやらしいトラバースをしないと行けない、僕が先頭でルートを作り地獄尾根に上り上げた。

第一関門突破、このルンゼは初登攀だろう。2004峰のピークに立つ、4年前を思い出した、とても悔しかったな。さあ第2関門だ、火の御子峰手前の最低コルまでのルート攻略だ。貧弱な低木に支点を作り懸垂1回目、地獄の1丁目1番地に降り立った。4年前に敗退下降した支点が残っていた、飛び道具を追加して今日はこの先を行く。足元はザクザクと崩れ若者は馬乗りで尾根を行く。2回目の懸垂はとても際どい、尾根通しでは進めないから下降とトラバースをしながら高度を下げていく。手でつかむ岩も崩れていく、地獄のど真ん中です。大きな岩に捨て縄で支点を作りセルフを取る。3回目の懸垂で最低コルに下りれそう、しかしここも甘くない、アイゼンをひっかけながら際どいトラバース、若者は半泣き状態だった。何とかコルに降り立ち第2関門突破、リベンジ達成です。

ここから最後の核心までフリーで行けるからロープを一旦しまうので先に行っててちょうだい、馬乗りになりながら進んでいった。

さあ第3関門、たった20m程の登りだけど核心だ。4年前より更にボロボロになっている、もう何年かたてば登れなくなるんじゃないか。ビレイしてもらい支点を作りながら登攀していく、積み木のような岩を崩さないようにアイゼンの爪をひっかけてよじ登る、どこまでも続くボロ岩は緊張の連続でした。際どく登り上げ第3関門を突破、残置の支点を作り直して若者をビレイして登ってきてもらう、さあピークはすぐそこ、気を抜かないで行こう。

4年前の登頂から誰も登っていないんだろう、一歩ずつ進みながら感慨深い気持ちが込み上げてきた。そして着いたぜベイビー、若者も頑張ってくれた、ここが正真正銘の火の御子峰のピークだよ。がっちり握手をして休憩した。記念写真をたくさん撮って絶景にうっとりする。ここにいつまでもいたいが現実に戻ろう、ずっと遠くに見える大汝峰まで登り返さないといけない。
帰りはYSHRさんと登ったルンゼから地獄谷に下りて周回する。支点を使って60m懸垂、更に30m懸垂でルンゼに降り立った。相変わらずマシンガンのように落石が襲ってきた、石に当たれば終わり、火の御子峰は行きも帰りも全く気が抜けないとても危険な山です。
ルンゼはクライムダウンで下りる、お互い監視しながら落石を避けて下っていく。そしてやっと安全地帯の地獄谷に降り立った。感無量、後は登り返して周回を完結させよう。

谷を遡行して高度を上げていく、正面に見える稜線はお手水鉢の鞍部だ。ザク雪のラッセルで体力が消耗していく、水の残りも少なくなってきた。運よく滝があったので水分補給をした。ん…元気が出てきたぞ。右の沢から七倉山に登り上げ遠回りしよう、男なら行くべ。
やめとけばよかったが後の祭り、天気が崩れてきた。大汝に上り上げるころには雲の中、強風が吹き荒れホワイトアウト、室堂も弥陀ヶ原もホワイトアウトでした。室堂の建物で風を避けて休憩していたら若い外人が下山していった、後を追うように下山開始、黒ボコ下でやっと雲の中から出て視界が開けた。先ほどの外人が見えない、えらい早いな。視界があれば快適な靴スキーで下っていく、あっという間に甚之助小屋が見えた。

小屋にはスキーヤーや登山者が数名いるのが見えた、先ほどの外人もいたが僕の姿を見ると走って下山していく。ムム…、疲れているがバトルとなると話が違うぞ。靴スキーを使うと差が短くなってきた、ロックオン、忍者のように後ろを行く。突然振り返り日本語で早いですねと言いながら登山道を走っていった。荷物が重いが僕も走る、お互い汗だくで別当にゴール、自撮りで写真を撮り後はチャリで帰るだけ。

ん、写真撮っているうちに外人がロードバイクで下って行った、ヤバい、チャリにまたがり追いかける、もう外人は安心しているのかすぐに追いついた、そして直線でぶち抜き猛ダッシュ、後ろを見ると必死に追いかけてきた。抜かれることなく市ノ瀬にゴール、火の御子周回とバトルができて幸せだ。
若い外人さん、帰りにどうもありがとうとあいさつしてきたので手を振って別れた。

終わってみれば火の御子峰周回17時間、白山にまた新たな記録を作れてとても幸せ、完全燃焼です。

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コメント

言葉が出ません!
ブログの更新が珍しく遅かったので、どちらに行かれたのかワクワクしておりましたが、まさかこちらとは!
四年間も登山者がいなかったのがそれを物語っているのか、凄まじい景色に圧倒されてしまいました。
2021/5/17 21:30
Re: 言葉が出ません!
cliffleeさんコメントありがとうございます。
今回の挑戦はもう最後であろう4回目、敗退すれば負け越しでしたので気合を入れていました。
成功のカギは4月に室堂まで歩荷しておいた重い登攀具デポとスキーを使って偵察に行けた事が大きかったです。
地獄尾根、火の御子峰は核心だらけですけど、今回の山行では2004峰ルンゼが全体の7割ほどの核心だといえます。ここの攻略をなくして成功はあり得ませんでした。5度目の挑戦はないです。。。
2021/5/18 3:37
白山神駈け道の風露草
久し振りに火の御子峰の記録を拝見しました。5登目くらいでしょうか。ボロボロの岩稜ですからアンカーセットが大変だったでしょうね。すごいです。おめでとうございます。
2021/5/24 21:31
Re: 白山神駈け道の風露草
renさま、ご無沙汰しております。
石川県の岳人なら一度は登りたい火の御子峰…、二度目の登頂でした。

何も記録のない数十年前の松任風露の先人の方々の登頂があるからこそ、後に続くチャレンジャーが現れます。
先人達の記録を見てみたいのですが…。
2021/5/25 5:25
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