宝珠山〜大谷山☆雨の前に坂越の湾と古い街並みを訪ねて
- GPS
- 02:39
- 距離
- 10.1km
- 登り
- 370m
- 下り
- 376m
コースタイム
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
バスは14:20と16:18の1日2便のみ |
コース状況/ 危険箇所等 |
良好に整備された登山道 (宝珠山〜小島は送電線巡視路) |
写真
感想
梅雨前線が活発になり週末にかけてかなりの強雨となるようだ。この日の午後は雨の振り出しまでは少し時間の余裕があるだろうと読んで、坂越を訪れることにした。
坂越を訪れるのは久しぶりだ。「さこし」と読むが、難読地名の一つだろう。この坂越を知ったのは、今から20年程前、当時勤めていた大学の上司から人から頂いた坂越産の牡蠣を下さったことによる。確かにその牡蠣は抜群に美味しかったのである。その後、坂越の古い街並みを目当てに訪れたことがあったが、その街のすぐ裏山が好展望の望海山であることなど当時は知るよしもなかった。この山を知ったのは最近のrika-goさんのレコのお陰だ。
相生で新幹線を下車するとこの日の午前中に神戸線内で生じた車両トラブルのせいで播州赤穂行きの列車が90分近く遅れて駅に到着する。しかも赤穂線は単線で駅で行き違いが出来ないため、赤穂駅にいる列車が相生に到着するまで、列車が発車することが出来ず、さらに出発は20分近く遅れる。
ようやく坂越の駅に到着する。駅の改札口で切符を回収していたのは研修中のプレートを付けているのでまだ就職して間もない新人なのであろうが、およそJRの駅員とは思えぬような背が高く、髪の長い美少女であった。時代は変わったものだと思う。駅にはコインロッカーは無かったが、駅前の駐輪場の建物の中にコインロッカーがあることを彼女が教えてくれる。
坂越の街へと至る緩やかな坂を登ると、道の両側には旧家が立ち並ぶようになり、途端にタイム・スリップしたような感覚だ。細い路地を左手の地蔵堂へと入り、小径を進むと船岡公園。坂越の港とその沖合に浮かぶ家島の島々の海景が広がる。家島は遠目にも砕石のために削り取られた山肌が荒々しい。
宝珠山に向かう。いくつもの遊歩道があるが、石仏コースを歩く。道沿いには古い石仏が並んでいる。石仏の慈悲に満ちた柔和な表情に思わずこちらも微笑む。
最初のピークは茶臼山と呼ばれ、かつて山城が築かれたところらしい。ピークが近づくにつれて左手には赤穂の街並みを見渡すことが出来るようになる。空気の湿度は高いが、海からは涼しい風が吹いてくる。
次のピーク宝珠山は山頂の右手にベンチが設けられ、坂越湾と家島諸島の展望が広がるが山頂は木立の中の地味なところで、小さな石仏がなければ通り過ぎてしまいそうなところだ。小さな山名標が山頂であることを示してくれていた。
北向きの尾根との分岐となるca240mのジャンクション・ピークは送電線の鉄塔を示す小さな標柱がある。どうやらこの尾根の道は送電線巡視路らしい。道理でハイカーが多く訪れるとは思えぬ登山路が良好に整備されている訳だ。
尾根からは右手には小豆島の島影が見えるが、島には標高のかなり低いあたりまで雲に覆われている。小豆島のあたりでは雨が降っているのだろう。雨雲がこのあたりまで北上してくるのも時間の問題だ。
鞍部へと下ると、再び坂越湾と彼方の家島の展望が大きく広がる。尾根の左手の方からは終始、大きな音が聞こえてくる。石川播磨重工業の敷地であることを示す看板が立っている。相生の造船場なのだろう。
再び登り返して送電線鉄塔のある標高点208のピークを越えると途端に相生湾が目に入る。途端に正面には大きな煙突が目に入る。相生の火力発電所のものらしい。巡視路の左手はずっとフェンスが張り巡らされている。尾根を下ると私の接近に驚いた鹿の親子が慌てて右手の茂みに飛び込む。
小島に向かって下降すると右手に分岐する道があり、みかんのへた山古墳とある。かつてこのあたり一帯を支配した豪族のもののようだ。海辺に降りると坂越湾は東側の相生湾の工場地帯、西側の賑やかな赤穂の市街とは山と半島とで隔絶されており、時間が止まったかのような静かな雰囲気だ。
小島の集落には「赤穂の天塩」の工場がある。その前の海岸で釣りをしている若者たちはどうやらベトナム人のようだ。おそらくは塩工場で働く実習生なのだろう。
小島のバス停を通り過ぎようとしたところで坂越港の方からバスがやってくる。そもそもバスがここまで通じていることも知らなかったが、なんと1日わずか2本しかないバスだ。バスはここで折り返して再び坂越港を経てアース製薬の工場を回ってから坂越の駅に向かうらしい。
バスの運転手が親切に「駅に向かうなら坂越港で降りて歩くのがいいでしょう」と教えてくれる。もうすぐ雨も降りそうなの気配もあるので有難くバスに乗せて頂くことにするが、そのお陰で思わぬ幸運が転がりこむことになるのだった。
坂越の古い街並みはまるでその一角だけ時代に取り残されたような雰囲気が漂う。その街並みの中心となっているのが右手にある奥藤酒造である。400年以上の歴史を誇り、兵庫県内では3番目に古い酒蔵らしい。酒蔵は17時まで酒を販売しており、好きなものを試飲させてくれるという。先ほどのバスに乗らなければ間に合わないところであった。
「忠臣蔵」の備前雄町の生?と山廃の純米の生酒を一本ずつ購入したところで、もう一つ「乙女」という銘柄があることに気がつく。試飲させていただくとスッキリした清涼感のある酒だった。酒蔵の若い男性によると、酒が若すぎて、あと2〜3年してからの方がいいかもしれませんとのこと。
立ち去ろうとしたところで変わった書籍を売っていることに気がついた。西播磨における250の山城跡に関する本だ。相当にマニアックな本であり、城跡巡りは趣味ではないが、山城跡の多数のイラストに惹かれ購入することにした。
千種川にかかる橋を渡ると酒屋があり、今度はここでビールを購入する。酒屋でも「忠臣蔵」が多く売られていたが、若い主人には坂越の街の酒蔵は誇りのようだ。私のぶら下げている「忠臣蔵」の紙袋をみて「何を買われたんですか」と聞かれるので、購入したものを説明すると「それは美味しいですよ」と嬉そうな顔で説明される。
再び坂越の駅に戻るとJRは6分遅れという。先ほど駅の到着した時は2時間近い遅れだったが、わずか短時間の間にダイヤの乱れがかなり解消したようだ。駅とホームとの間のベンチに腰掛けてビールを開ける。駅員が駐在するのは17時までなのだろう、背後では先ほどの女性駅員が片付けを始める。間も無く姫路行きの列車が到着し、列車に乗り込むと早々に雨が降り始めたかと思うと瞬く間にかなりの驟雨になるのであった。
瀬戸内の海景もよいが、この小さな山旅の魅力はなんといっても坂越の美しい街並みと美酒を醸す古い酒蔵にあるように思われる。家に帰って早速にも「忠臣蔵」を開けると、雄町らしいしっかりとしたコクのある上品な飲み口の酒であった。今回の山行のお陰でまた一つ、お気に入りの酒が増えた。
みかんのへた山古墳のwikipediaによる解説
https://ja.wikipedia.org/wiki/みかんのへた山古墳
参考にさせていただいたrika-goさんのレコ
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3130824.html
コメント
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やっぱり瀬戸内海制覇
雨の影響は大きかったようですね
バスもJRもタイミングが良かったですね
人徳のなせる業か
みかんのへた山 素晴らしいネーミング
やまねこさんは左党(最近はあまり聞かないかな)ですか
こんなところまでバスがあるとは思いもよりませんでした。
お陰で美味しい日本酒を入手することが出来て、山行の満足度がアップ致しました。
人徳のせいではありません。
左党というのは知りませんしたが、どうやらそのようです。heheさんもそうでしょうね。
ところで、これはビールを飲む人には当てはまらない表現なのかもしれませんね。
みかんのへた山のwikipediaのページを追加しました。
これは古墳をみかんの蔕に見立てたようですが、周囲に樹木が生い茂っていなかった時のことのようですね。
私も名前にそそられてあそこまで足を伸ばしました。
子供がつけた名前みたいで可愛いです。
こちらに引っ越してきて山から瀬戸内海を望むことが増えましたが
ほんま穏やかでいい景色ですね!
坂越のまちものんびり歩くのにいい場所でした。
そういえば立派な酒蔵がありましたが、いいものを見つけられたようでよかったです 。
ちなみに私は左利きですが
一緒に飲む人がいないと美味しくないので本物の左利きではないんでしょうねー。
コメント有難うございます。
坂越の湾を取り囲んでこのような魅力的な山があることを知ったのはrika-goさんのお陰で、感謝しております。
rikaさんが廻られた奥の院をスルーしてしまったのが心残りではありましたが、立ち寄っていたらバスに間に合わなかったかもしれないので、結果オーライかもしれません。次回の楽しみにしたいと思います。
>一緒に飲む人がいないと・・・
それは私も同様です。我が家の酒はこれまで半分は家内が消費していたのですが、最近は成人した長男も呑むようになったので、酒の減り方が早くて困っています
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