新穂高〜双六〜弥助沢〜黒部源流〜東沢水晶カール滑降
- GPS
- 80:00
- 距離
- 46.9km
- 登り
- 5,133m
- 下り
- 5,115m
コースタイム
- 山行
- 7:59
- 休憩
- 2:08
- 合計
- 10:07
- 山行
- 1:50
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 1:50
- 山行
- 7:59
- 休憩
- 3:11
- 合計
- 11:10
天候 | 5/8 晴れのち曇り /9 曇りのち晴れ /10 曇りのち雪 /11 終日晴れ /12 曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2022年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
復路 5/11 新穂高ロープウェー 1255(バス)1328 平湯温泉 1455(バス)1623 松本1843-2127 大月 2131-2218 八王子 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・想像以上に融雪が進んでいましたが、真冬の雪の多さがデブリの大きさ(特に林道)に表れていました。ただ、山中の沢筋の標高低いところは結構水流が出ていました。 ・/10の降雪で各沢の滑走斜面はスラフが出ていました。 ・水ポイント:ワサビ平、双六谷上部の二俣、樅沢・湯俣出合、東沢2200より下部 なので一度も水作りませんでした。 ・秩父沢でガスって左を意識しすぎたことで、秩父沢自体をを登ってしまった…急激に狭くなってその先に絶壁が見えて気づいた。失態 |
その他周辺情報 | 意地でも『平湯の森』に入りたかったので、根性で戻ってきた。 |
写真
感想
今春の残雪はあっという間になくなってゆき、そして妙高から帰ってきてからあっという間にGWになってしまった。いくら何でも北アルプスなら雪は十分だろ?と思っていたら、槍ヶ岳山荘さんのインスタでは『雪がない』との記事を目にした。例年通り正規のGWは仕事、少しずらしての休暇で今年は絶対に行きたいと思っていた北アルプス・東沢のカールを目指した。何度か試みたことがあったものの、いつも天候悪化、気持ちが折れるなど、ワリモの北側になかなか縁がなかった。天気予報は何とかなりそうな感じ…今年はどうなるんだろう。
5/7 長めの山行なので電車・バス利用、アイテムが多いのが面倒だけれど、新しいあずさは荷物置き場に板固定箇所があるのがありがたい。旧無料浴場のあったバス停で過積載スタイルに変更する。初日はワサビ平で終わりでも、すでに汗だく。いくら新しい板(ATOMIK VANTAGE85)が軽くても、やはり5日分の荷物は重い。林道にはこの時期例年見かけない残雪や巨大デブリが残っている。下山してくる人に聞けば左俣橋からスキーは履けるとのこと。もし、4月中旬に来ていたら穴毛谷辺りからスキーが使えたんではないだろうか?ワサビで幕営するも今夜から雨模様、また敗退だったらどうしようか考えてしまう。
/8 夜中少し降ったがテントは濡れていない。ただものすごいガスだったので二度寝し明るくなってから出パ。帰りにしか使わないものを小屋の陰におかせていただいたので、ここからブーツで歩く。左俣橋の手前からスキーがはけそうな感じだったが、カーブで先がわからず橋までシートラで進み、言われた通り橋から先すぐでスキーを履く。シールも新品、特に気になるところもなし。高度の半分以上がガス、雪渓の下部はやはり山の際を進む。帰りまで雪がつながっているのかが微妙な部分がある。鏡平から下ってきた女性3人組に聞けば、上部は結構な雨だったそうで、はじめはGPSを駆使して下ってきたという。ただ今日は回復傾向のはず。可能な限り東沢に近いところまで行けるように頑張るだけだ。
1700mくらいを外さずトラバースしなくてはならない箇所、要するにこれが秩父沢出合なんだけれど、あまりに見えなかったことから、向かって左を進めば鏡平に引き込まれないと判断し左寄りに歩いていると、小石の混じったデブリ跡と周辺が岸壁に囲まれ始める。『ん?なんだ?』すーっとガスが晴れると見たことのない風景…何度も来ているところなのに秩父沢に入ってしまっていた。コンパスも見ていて確かに結構方向が変わっていたのだけれど、なぜ疑わなかったのか?左を意識しすぎた。ただでさえ疲れているところでとんだ寄り道になってしまった。すぐに軌道修正し本筋に戻る。なんでこの規模の沢の大きさに気づかなかったのか、自己嫌悪に陥る。ただひたすらに乗越目指して登る。新しい板にクライミングサポートを付けてくるのを忘れ、あの小さな道具で疲労度がまるで違うことを思い知らされた。もう帰ってしまおうかと考えてしまう。里心?が芽生えてきてしまった。
大ノマ乗越で大休止し、本山行1本目の滑りに入る。5センチ長くやや硬めの板は、BCで使ってもあまり影響なさそう。テレマークターンに入るとき山足を引き加減でターンに入らないと回りにくい部分はあるかな?この斜面はいつもより地雷が多かった気がする。斜面の途中から双六谷上流を見れば、二俣付近まで雪はつながっているようで一安心。おおむね左岸、ところにより右岸といったルートどりで、最後は手持ちスキーで二俣到着。いつも通りここで水を汲もうかと思ったが、今日の感じなら弥助沢出合までたどり着けそうなことから休憩のみとした。残雪は双六Pからダイレクトで滑ることはできないくらい減っているが、谷筋は多めなんだろう。
小屋の見えるハイマツ帯から直接斜登行で双六分岐に向けて登る。ほとんど風もないが、振り返った先の槍は雲の中に消えていっている最中、明日は山に入る前の天気予報は崩れる感じだったけれど…双六中峰のカール下を樅沢にドロップすると、ハイマツ帯を抜けたすぐ先には面ツル大斜面が顔を出す。いい斜面なのにそれほどシュプールも残っていないことから、あまり滑られてないのかな?口笛でも出そうなほど快適斜面を弥助の出合へ向かうが、下部は今まで滑った中で一番亀裂整が多かった。
樅沢から水がとりやすそうなところに幕営、いつも風も影響もなく大した整地も必要もないので、本当にここはいいところだ。夜はまだ星なども見えていているが、ラジオの伝える明日の天気はあまりよくない感じだった。
/9 朝は曇り、でも雲が早く時間の問題なのか?明日はいい天気らしいので、可能な限り東沢に近いところまで進んでおきたい。三俣山荘に向かって傾斜が上がってくるところで雪がちらつき始める。雨よりかいいと言い聞かせ三俣山荘に到着すると、この時期今まで見た中で一番雪が少ない。2時間ほどしか歩いてはいないが、もうかなり雲も低く、源流まで下りて整地している間に天候が荒れてきそうだったので、先人が整地したところをありがたく使わせていただき幕営する。完了とともに雪が激しくなってきたので、これは正解だったかな?明日のために充電開始、KNBが感度良好で聞けるのでうれしい。風はほとんどないけれどまるでやむ気配がなく、覗いてみれば20センチ近く積もっている。夕方トイレついでに除雪を開始すると、奇跡的に中俣乗越方面が夕焼けに染まり、雪も止んできた。まさかこの時期に新雪が滑ることができるとは思わなかった。ストップ雪にならなければいいなぁ。
/10 今日は忙しいだろう。3本滑ることができるのか?山は真っ白になっている。源流に向けて緩やかな尾根にターンを決めると、足から伝わってくる感触がこの上なくいい。シュプールは下地が汚れたザラメのため、とてもきれいに浮かび上がっていた。源流の碑があるであろうあたりから岩苔乗越に向けシール登行。乗越から見る祖父・薬師・黒五等々の山は冬の山かというくらい真っ白、こんな一瞬が来てよかったと思わせる部分かな?
乗越からワリモ分岐まではシートラでアイゼン登行する。クマが少し前に歩いたようで足跡がくっきりと残っていたが、彼?はどこへ消えたんだろう。分岐からのトラバース斜面を避け、一旦小Pに登ってから先を目指す。稜線はもう少し早い時期なら湯俣側にできた雪庇状をスキーを履いて進めそうだった。ド快晴の本日、所々出ている夏道を拾いつつ進む。水晶小屋手前の夏道が、踏み抜きなんかで一番体力が奪われた。真っ白斜面に早く飛び込みたい衝動を抑えつつ、小屋に着くととりあえず斜面を偵察、地図では小屋から水晶岳側のピョコを一つ越えたところからが、いい斜面が続いていそうな感じ。でもなんかその手前で荷物を降ろして滑る準備を始めてしまった。野口五郎からも滑りたいと思っていたけれど、まるで雪がついていなかったので今回は見送ることにした。
登り返しも考えてルート確認するも、中盤がなかなか傾斜がきつそう。でもとりあえずここまで来たからには滑らないという答えはない。現在地から水晶岳方向の斜面に向かって斜滑降しながらドロップイン。素晴らしい大斜面、感動の一言に尽きる。でも2500から下が滑るのはできても、登りはシートラ必至な感じ。ここまででスラフも出ているのでノド状の所は避け、乗越側斜面に迂回しながら次の斜面に向かってトラバースする。
2450あたりのダケカンバでシールオンし、水晶岳北側カールに取り付いた。上から見たよりも傾斜が緩く、稜線手前のカール底まで登って滑り始めようと思っていたが、条件良さそうなので稜線まで乗り上げた。雪はどんどん緩くなってきている。水晶P南面はダイレクトで東沢に降りられそうだったが、北面は荒々しくこんなにピークでかいんだという感じ。岩苔小谷をまたいで薬師が正面に鎮座している。足元に小さく高天原小屋が見えた。いい眺めに少し長めの休憩後、本流筋まで滑る。この斜面も最高だった。登り返しが楽なように2500くらいからトラバース始めたけれど、小尾根が邪魔であまりいい滑りができなかった。2300の本筋までそのまま滑った方が気持ち良かったんだろう。
小屋までの登りは東沢乗越までは楽でも、そのあとの稜線歩きが面倒くさそう。とりあえず2600くらいまで上がれば、カール底をトラバースしていけば小屋直下斜面に出られそうだったので、乗越に向かう沢を詰める。予定通りトラバースを開始し、小屋直下斜面を見ると、ツボ足なら登れそうでも大量の点発生小規模雪崩が覆っていたので、そのまま初めに滑った斜面にトラバースを再開する。結構斜度はきつい感じで雪の状態では苦労しそうだ。雪面がずれることがなかったため、斜登行を繰り返してはじめのシュプールに合流し、やっと稜線にたどり着いた。やっと岳人バックナンバーで見て滑りたいと思っていた斜面を滑ることができ、感無量だった。
小屋脇でシートラに切り替え岩苔乗越向かう。乗越からは整理体操的な斜度を滑走、この斜面は黒部五郎を正面に見ながら滑ることができ、素晴らしいロケーションだ。さすがに一日晴れていたので雪が重い。小屋から入る沢型をシールオンして登り小屋にたどり着いた。
明日の最終日、バス時刻を考えると平湯の森には寄ることができない感じのタイム感だったので、天場を再び弥助出合に移すことにした。気分が高揚していることもあり、その勢いで撤収作業し、小屋脇から鷲羽方向に夏道を少し戻って弥助沢に滑り込む。ここも何度も滑っているが、ノド状になるところまでは鷲羽のふもとを滑る大斜面。日陰になってやや締まり加減の雪面を、昨日泊まっていた場所へ戻った。まだ明るかったので双六小屋まで行ける時間帯ではあったが、ここで緊張感は途切れたので終了。結局一日ストップ雪になることはなかったのでラッキーだった。信州川の谷筋なのに北陸側のラジオ電波の方が入りよく、天気は下り坂と告げていた。
/11 燕方面の空がものすごい発色の朝焼けになっている。風が強い樅沢を登り、巻き道分岐まで登り、ハイ松帯で風をよけながら滑降準備する。ところが小屋前の斜面にたどり着くまでシールオフしてはならないことを忘れていた。滑降ポイントまでそのまま歩き続けたことですっかり足が効いてしまい、大ノマ下までの緩斜面にかなり時間がかかってしまう。毎度思うが、この大ノマまでの登りが一番きつい。ヘロヘロになって大ノマ乗越到着、この感じだと目標のバスに乗れそうだ。
斜面は溝状になってやや滑りにくい感があったが、硬めの板はこんな時結構楽に滑ることができた。秩父沢トラバース後の最終斜面下部で、いったんスキーを外さないとだめだったものの、無事左俣橋に到着。再びスキーを装着し、はじめの巨大デブリが終わったところで今シーズンの滑り部門は終了。ワサビ平に戻ると小屋開けの準備が始まっていた。デポ品を渡してもらい、めちゃめちゃ足を洗ってアプローチシューズに変更し、ロープウェーバス停に急いで向かう。林道下部は新緑が始まっていた。新緑は大変目に優しく、新緑常緑樹エリアのキャンプなんてのもいいなぁ。平湯の森は新緑状態、許してもらえるなら泊まっていきたい衝動を抑えつつ、松本からは各駅で帰宅の途に就いた。
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