(はじめに)
※ この章は、2020年に初版をリリースした際には、「1−7章 剣山」という
章番号、題名で、剣山とその周辺の地質を説明する内容でした。
2022年11月からの、第1部「四国の山々の地質」の全面改訂作業により、
剣山とその周辺の地質に関しては、「(新しい)1−7章」に統合しました。
そこで、この章は、章番号を「1−8章」に変更するとともに、
初版の第1部「四国の山々の地質」ではほとんど触れていなかった、
「剣山地」の周辺部の山々の地質についての内容として、
完全に新たに書き下ろしました。
初版とは内容がまったく入れ替わっていますが、悪しからずご了承ください。
さて、「剣山地」のうち、主峰「剣山」や「三嶺」などの「剣山地中核部」の地質、地形については、前章(1−7章)で説明しましたが、「剣山地」はこの「中核部」の山々以外にも、登山対象となっている山々が数多くあります。またそれぞれの地域では地質もさまざまです。
この章では、前章で説明した「剣山地中核部」以外の地域を「剣山地周辺部」と称することとし、「剣山地周辺部」をいくつかの地域、山域毎にわけて、それらの地域の山々の地質を、説明します。
章番号、題名で、剣山とその周辺の地質を説明する内容でした。
2022年11月からの、第1部「四国の山々の地質」の全面改訂作業により、
剣山とその周辺の地質に関しては、「(新しい)1−7章」に統合しました。
そこで、この章は、章番号を「1−8章」に変更するとともに、
初版の第1部「四国の山々の地質」ではほとんど触れていなかった、
「剣山地」の周辺部の山々の地質についての内容として、
完全に新たに書き下ろしました。
初版とは内容がまったく入れ替わっていますが、悪しからずご了承ください。
さて、「剣山地」のうち、主峰「剣山」や「三嶺」などの「剣山地中核部」の地質、地形については、前章(1−7章)で説明しましたが、「剣山地」はこの「中核部」の山々以外にも、登山対象となっている山々が数多くあります。またそれぞれの地域では地質もさまざまです。
この章では、前章で説明した「剣山地中核部」以外の地域を「剣山地周辺部」と称することとし、「剣山地周辺部」をいくつかの地域、山域毎にわけて、それらの地域の山々の地質を、説明します。
1) 「矢筈山系」の山々の地質
1―1章でも触れましたが、「剣山地」のうち、主峰の剣山から見て北西方向には、矢筈山(やはずやま;1849m)を主峰とした、標高 1500m以上の山々が立ち並んでいます。この一帯は、登山界では、「矢筈山系(やはずさんけい)」あるいは、「祖谷山系(いやさんけい)」と呼ばれています(以下、山域名称は「矢筈山系」に統一します)。
この「矢筈山系」の山々は、「剣山地中核部」と対抗するかのように、1600〜1800m級の山々が多数立ち並んでいます。
具体的には、矢筈山(1849m)、寒峰(かんぽう;1605m)、烏帽子山(1670m)、石堂山(いしどうやま;1636m)、黒笠山(くろがさやま;1703m)などが、登山対象ともなっている主な山です(文献1)、(文献2)。
これらの山々は、剣山や三嶺といった「剣山地中核部」の山々に比べると登山者も少な目で、知名度もあまり高くありません。しかし、この「矢筈山系」は、「剣山地」の中では「剣山地中核部」に次いで標高の高い山々が多く、地質的にも1−7章で説明した「剣山地中核部」の山々とは異なります。
まず、産総研「シームレス地質図v2」でこの「矢筈山系」の山々の地質を確認すると、ほぼ全てが「三波川帯」に属する結晶片岩類で形成されていることが解ります。
(添付の図1もご参照ください。)
具体的には、「泥質片岩」分布域が広く、その中に「苦鉄質片岩」分布域、「珪質片岩」分布域があります。
更に細かく見ると、「矢筈山系」中央部の、矢筈山、烏帽子山、寒峰、黒笠山、及びそれらの山々を繋ぐ稜線部は、「苦鉄質片岩」、「珪質片岩」分布域となっています。
この地質分布域と地形的な高所との対応関係は、偶然とは思えず、「泥質片岩」に、比べ、「苦鉄質片岩」、「珪質片岩」のほうが、浸食に強いことを反映しているのではないか? と思えます(この段落は私見を含みます)。
なお、(文献3)、(文献4)では「矢筈山系」の地質、地形について、ほとんど言及されてはいません。
「矢筈山系」の山々の地形としては、谷筋は深く刻まれていますが稜線部はそれほど急峻ではありません。但し「剣山地中核部」のような小起伏面は、ほどんど見られません。また稜線部には所々に結晶片岩類で形成された、ちょっとした岩場や岩峰があります。
この「矢筈山系」の山々は、「剣山地中核部」と対抗するかのように、1600〜1800m級の山々が多数立ち並んでいます。
具体的には、矢筈山(1849m)、寒峰(かんぽう;1605m)、烏帽子山(1670m)、石堂山(いしどうやま;1636m)、黒笠山(くろがさやま;1703m)などが、登山対象ともなっている主な山です(文献1)、(文献2)。
これらの山々は、剣山や三嶺といった「剣山地中核部」の山々に比べると登山者も少な目で、知名度もあまり高くありません。しかし、この「矢筈山系」は、「剣山地」の中では「剣山地中核部」に次いで標高の高い山々が多く、地質的にも1−7章で説明した「剣山地中核部」の山々とは異なります。
まず、産総研「シームレス地質図v2」でこの「矢筈山系」の山々の地質を確認すると、ほぼ全てが「三波川帯」に属する結晶片岩類で形成されていることが解ります。
(添付の図1もご参照ください。)
具体的には、「泥質片岩」分布域が広く、その中に「苦鉄質片岩」分布域、「珪質片岩」分布域があります。
更に細かく見ると、「矢筈山系」中央部の、矢筈山、烏帽子山、寒峰、黒笠山、及びそれらの山々を繋ぐ稜線部は、「苦鉄質片岩」、「珪質片岩」分布域となっています。
この地質分布域と地形的な高所との対応関係は、偶然とは思えず、「泥質片岩」に、比べ、「苦鉄質片岩」、「珪質片岩」のほうが、浸食に強いことを反映しているのではないか? と思えます(この段落は私見を含みます)。
なお、(文献3)、(文献4)では「矢筈山系」の地質、地形について、ほとんど言及されてはいません。
「矢筈山系」の山々の地形としては、谷筋は深く刻まれていますが稜線部はそれほど急峻ではありません。但し「剣山地中核部」のような小起伏面は、ほどんど見られません。また稜線部には所々に結晶片岩類で形成された、ちょっとした岩場や岩峰があります。
2) 「剣山地東部」の山々の地質
「剣山地」のうち、「中核部」より東側は、徳島平野へ向かって徐々に高度を下げながら、1600mから700m級の山々が立ち並んでいます。この一帯には、明確な山域名称はありませんが、説明のため、以下「剣山地東部」と称することにします。
この「剣山地東部」地域には、登山対象となっている山々が数多くあります(文献1)、(文献2)。
まず、「剣山地中核部」に近い山々としては、高城山(たかしろやま;1628m)、雲早山(くもそうやま;1496m)、高丸山(たかまるさん;1439m)が挙げられます。
一方、徳島平野に近い山々としては、旭が丸(あさひがまる/「旭ヶ丸」とも書く;1020m)、中津峰山(なかつみねさん/「なかつみねやま」とも呼ぶ;773m)、太龍寺山(たいりゅうじさん/「太竜寺山」とも書く;618m)があります。
また登山対象とは言い難いですが、徳島市中心部のすぐ脇には、観光地でもある眉山(びざん;290m)があります。
この「剣山地東部」の山々のうち、「剣山地中核部」に近い、高城山、雲早山、高丸山の3つの山の地質は、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、ジュラ紀付加体のうち「メランジュ相」の地質が大部分を占め、一部にチャート岩体、玄武岩の岩体、石灰岩の岩体が点在しています。
(文献3−a)によると、この高城山、雲早山、高丸山を含む地質体は、ジュラ紀付加体としての「秩父帯」に属しており、細かくいうと「雲早山(くもそうやま)ユニット」という地質体名で呼ばれており、前章で説明した、剣山地の主峰、剣山を含む地質体の続きになります。
(添付の図2もご参照ください。)
次に、徳島平野に近い山々の地質を個別に説明します。
(添付の図3もご参照ください。)
まず「中津峰山」は、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、山体の大部分が泥質片岩で形成されており、山頂部を含む一部には、チャート/珪質泥岩を原岩とすると推定される珪質片岩が分布しています。高圧型変成帯である「三波川帯」に属すると推定されます。
次に「旭が丸」は、上記「中津峰山」から西へと長く伸びる稜線上にあるピークで、山自体も東西方向に細長く伸びた山稜の一部、といった感じです。その細長い稜線部には現在、風力発電用の巨大風車が立ち並んで、やや異様な風景です。
この「旭が丸」付近の地質を、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、山頂部を含む細長い頂上稜線部は、東西に長く分布した「珪質片岩」分布域となっています。この「珪質片岩」分布域は南北方向にはわずか300mほどの幅です。
一方、山体の南側斜面は、「中津峰山」から続く「泥質片岩」分布域となっています。山体の北側斜面は、「変質玄武岩」と「変質ハンレイ岩」が複雑に分布しています。北側斜面を形成しているこれらの地質体は、おそらく、「御荷鉾緑色岩類」に属すると思われます。
「旭が丸」の、東西に細長い稜線部を持つ独特の地形は、上記「珪質片岩」分布域と重なっており、「珪質片岩」が浸食に強い為に、このような細長い山稜地形となっていると推測されます。
また前章で説明した三嶺の山頂部や天狗塚が、「珪質片岩」と同類の「変成チャート」で形成されていて、やや高みとなっていることに類似しており、「差別浸食作用」の典型のような地質と地形の関係だと言えます(この段落は私見を含みます)。
次に、「太龍寺山」の地質について述べます。
この山は、四国八十八カ所の霊場の一つ、「太龍寺(たいりゅうじ)」が頂上付近にあり、登山対象というよりは、「四国八十八カ所の霊場」として良く知られています。
この「太龍寺山」付近の地質を、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、かなり複雑な地質構造となっており、ジュラ紀付加体(メランジュ相に石灰岩体、チャート岩体を含む)の領域、ジュラ紀付加体(砂泥互層)の領域、泥岩層(白亜紀、非付加体型堆積岩)の領域、白亜紀付加体(砂泥互層)の領域、が複雑に分布しています。
このうちジュラ紀付加体は「秩父帯」に帰属すると思われます。一方「白亜紀付加体」の帰属はやや不明瞭で、「秩父帯」の一部とする考え方もあるようですが、一般的には四国のうち「白亜紀付加体」は「四万十帯」(細かく言うと「四万十北帯」)、とされます。
太龍寺山の山体は、ジュラ紀付加体のうち、「砂泥互層」領域と、「メランジュ相」領域、及び点在する石灰岩体、チャート岩体から形成されています。
地質図を細かく見ると、「太龍寺」の本殿があるあたりはチャート分布域で、この近くには崖状地形があり、その崖の上には、弘法大師の座像が鎮座しています。
四国には「弘法大師の修行場」という伝承の場所があちこちにありますが、多くはこのような崖状、岩壁状の場所です。
最後に、徳島市内にある「眉山」の地質を産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、ここは「三波川帯」に属する領域で、結晶片岩類(泥質片岩、苦鉄質片岩)で形成されています。
眉山はロープウエーや車でも上がれ、観光地化していますが、麓からのハイキング道もいくつかあります。このハイキング道沿いには、この結晶片岩類の露頭が見られます。
この「剣山地東部」地域には、登山対象となっている山々が数多くあります(文献1)、(文献2)。
まず、「剣山地中核部」に近い山々としては、高城山(たかしろやま;1628m)、雲早山(くもそうやま;1496m)、高丸山(たかまるさん;1439m)が挙げられます。
一方、徳島平野に近い山々としては、旭が丸(あさひがまる/「旭ヶ丸」とも書く;1020m)、中津峰山(なかつみねさん/「なかつみねやま」とも呼ぶ;773m)、太龍寺山(たいりゅうじさん/「太竜寺山」とも書く;618m)があります。
また登山対象とは言い難いですが、徳島市中心部のすぐ脇には、観光地でもある眉山(びざん;290m)があります。
この「剣山地東部」の山々のうち、「剣山地中核部」に近い、高城山、雲早山、高丸山の3つの山の地質は、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、ジュラ紀付加体のうち「メランジュ相」の地質が大部分を占め、一部にチャート岩体、玄武岩の岩体、石灰岩の岩体が点在しています。
(文献3−a)によると、この高城山、雲早山、高丸山を含む地質体は、ジュラ紀付加体としての「秩父帯」に属しており、細かくいうと「雲早山(くもそうやま)ユニット」という地質体名で呼ばれており、前章で説明した、剣山地の主峰、剣山を含む地質体の続きになります。
(添付の図2もご参照ください。)
次に、徳島平野に近い山々の地質を個別に説明します。
(添付の図3もご参照ください。)
まず「中津峰山」は、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、山体の大部分が泥質片岩で形成されており、山頂部を含む一部には、チャート/珪質泥岩を原岩とすると推定される珪質片岩が分布しています。高圧型変成帯である「三波川帯」に属すると推定されます。
次に「旭が丸」は、上記「中津峰山」から西へと長く伸びる稜線上にあるピークで、山自体も東西方向に細長く伸びた山稜の一部、といった感じです。その細長い稜線部には現在、風力発電用の巨大風車が立ち並んで、やや異様な風景です。
この「旭が丸」付近の地質を、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、山頂部を含む細長い頂上稜線部は、東西に長く分布した「珪質片岩」分布域となっています。この「珪質片岩」分布域は南北方向にはわずか300mほどの幅です。
一方、山体の南側斜面は、「中津峰山」から続く「泥質片岩」分布域となっています。山体の北側斜面は、「変質玄武岩」と「変質ハンレイ岩」が複雑に分布しています。北側斜面を形成しているこれらの地質体は、おそらく、「御荷鉾緑色岩類」に属すると思われます。
「旭が丸」の、東西に細長い稜線部を持つ独特の地形は、上記「珪質片岩」分布域と重なっており、「珪質片岩」が浸食に強い為に、このような細長い山稜地形となっていると推測されます。
また前章で説明した三嶺の山頂部や天狗塚が、「珪質片岩」と同類の「変成チャート」で形成されていて、やや高みとなっていることに類似しており、「差別浸食作用」の典型のような地質と地形の関係だと言えます(この段落は私見を含みます)。
次に、「太龍寺山」の地質について述べます。
この山は、四国八十八カ所の霊場の一つ、「太龍寺(たいりゅうじ)」が頂上付近にあり、登山対象というよりは、「四国八十八カ所の霊場」として良く知られています。
この「太龍寺山」付近の地質を、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、かなり複雑な地質構造となっており、ジュラ紀付加体(メランジュ相に石灰岩体、チャート岩体を含む)の領域、ジュラ紀付加体(砂泥互層)の領域、泥岩層(白亜紀、非付加体型堆積岩)の領域、白亜紀付加体(砂泥互層)の領域、が複雑に分布しています。
このうちジュラ紀付加体は「秩父帯」に帰属すると思われます。一方「白亜紀付加体」の帰属はやや不明瞭で、「秩父帯」の一部とする考え方もあるようですが、一般的には四国のうち「白亜紀付加体」は「四万十帯」(細かく言うと「四万十北帯」)、とされます。
太龍寺山の山体は、ジュラ紀付加体のうち、「砂泥互層」領域と、「メランジュ相」領域、及び点在する石灰岩体、チャート岩体から形成されています。
地質図を細かく見ると、「太龍寺」の本殿があるあたりはチャート分布域で、この近くには崖状地形があり、その崖の上には、弘法大師の座像が鎮座しています。
四国には「弘法大師の修行場」という伝承の場所があちこちにありますが、多くはこのような崖状、岩壁状の場所です。
最後に、徳島市内にある「眉山」の地質を産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、ここは「三波川帯」に属する領域で、結晶片岩類(泥質片岩、苦鉄質片岩)で形成されています。
眉山はロープウエーや車でも上がれ、観光地化していますが、麓からのハイキング道もいくつかあります。このハイキング道沿いには、この結晶片岩類の露頭が見られます。
3) 石立山の地質と地形
石立山(いしだてやま;1707m)は、「剣山地」の南部にある山で、徳島県と高知県との県境部にそびえています。剣山―三嶺の縦走路からは、南に約6kmの位置にありますが、上記縦走路との間に登山道はなく、独立峰的な山です。
この山は、四国の山々のなかでも険しい山として知られており、かつ登山口からの標高差も大きい山です。またしばしば、死亡事故も含めた滑落事故が多い山でもあります。そういう点で、いわば「剣山地」のラスボス的な難峰です。
さて石立山とその周辺の地質を、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、石立山の山頂部を含むこの一帯には、東西方向に横長に、石灰岩と玄武岩が分布しています。一方でこの東西方向に延びる岩体の北側は、砂岩(ジュラ紀付加体)が分布しています。またその南側は、砂岩(白亜紀、非付加体型堆積層)及び、砂泥互層(白亜紀付加体/四万十帯)が分布しています。
(石立山とその周辺の地質については、添付の図4もご参照ください。)
石灰岩体、玄武岩体が分布している石立山の標高が1707mあるのに対し、北側の砂岩分布域では標高が1400m台と低くなっています。また南側は、「四つ足峠」という徳島県/高知県を繋ぐ峠の場所で、標高が1000mまで落ち込んでいます。
この石立山とその周辺では、相対的に浸食に強い石灰岩、玄武岩分布域では標高が高くてかつ崖状地形もあって険しく、いっぽうで相対的に浸食に弱い砂岩質の地質分布域では標高は低く、崖状地形もほとんどない、という点で、地質と地形との対応関係(差別浸食作用)が良く解る山と言えます。
なお、(文献5)、(文献6)によると、この石立山付近の石灰岩体、玄武岩体を含む領域は、ジュラ紀付加体である秩父帯(秩父帯南帯)のうち、「三宝山ユニット」という地質体であり、そこに分布している(変質した)玄武岩の化学分析により、海洋島玄武岩型((文献6)では「OIT型」と記載されている)であることが解っています。
(なお、石立山のうち石灰岩の化石や形成年代についての文献は見つかられませんでした)
すなはち石立山を構成している石灰岩体、玄武岩体は、海洋プレート上にあったサンゴ礁などからなる石灰岩体を上に乗せた、玄武岩からなる海山が、ジュラ紀に付加したもの、と考えられます。
この山は、四国の山々のなかでも険しい山として知られており、かつ登山口からの標高差も大きい山です。またしばしば、死亡事故も含めた滑落事故が多い山でもあります。そういう点で、いわば「剣山地」のラスボス的な難峰です。
さて石立山とその周辺の地質を、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、石立山の山頂部を含むこの一帯には、東西方向に横長に、石灰岩と玄武岩が分布しています。一方でこの東西方向に延びる岩体の北側は、砂岩(ジュラ紀付加体)が分布しています。またその南側は、砂岩(白亜紀、非付加体型堆積層)及び、砂泥互層(白亜紀付加体/四万十帯)が分布しています。
(石立山とその周辺の地質については、添付の図4もご参照ください。)
石灰岩体、玄武岩体が分布している石立山の標高が1707mあるのに対し、北側の砂岩分布域では標高が1400m台と低くなっています。また南側は、「四つ足峠」という徳島県/高知県を繋ぐ峠の場所で、標高が1000mまで落ち込んでいます。
この石立山とその周辺では、相対的に浸食に強い石灰岩、玄武岩分布域では標高が高くてかつ崖状地形もあって険しく、いっぽうで相対的に浸食に弱い砂岩質の地質分布域では標高は低く、崖状地形もほとんどない、という点で、地質と地形との対応関係(差別浸食作用)が良く解る山と言えます。
なお、(文献5)、(文献6)によると、この石立山付近の石灰岩体、玄武岩体を含む領域は、ジュラ紀付加体である秩父帯(秩父帯南帯)のうち、「三宝山ユニット」という地質体であり、そこに分布している(変質した)玄武岩の化学分析により、海洋島玄武岩型((文献6)では「OIT型」と記載されている)であることが解っています。
(なお、石立山のうち石灰岩の化石や形成年代についての文献は見つかられませんでした)
すなはち石立山を構成している石灰岩体、玄武岩体は、海洋プレート上にあったサンゴ礁などからなる石灰岩体を上に乗せた、玄武岩からなる海山が、ジュラ紀に付加したもの、と考えられます。
(参考文献)
文献1) 徳島県勤労者山岳連盟 著
「新・分県登山ガイド 第35巻 徳島県の山」
山と渓谷社 刊 (2005)
の、それぞれの山の項
文献2) 石川、清家、三谷、谷山、井本、前田、尾野 共著
「四国百名山」
山と渓谷社 刊 (2000)
の、それぞれの山の項
文献3) 日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第7巻 四国地方」
朝倉書店 刊 (2016)
文献3−a) 文献2)のうち、
第5−1章「秩父帯の付加コンプレックス、陸棚層」の項
及び、図 5.1.10「四国東部、木沢地域の地質図」
文献4) 太田、成瀬、田中、岡田 編
「日本の地形 第6巻 近畿・中国・四国」
東京大学出版会 刊 (2004) のうち、
7−2章 「四国山地」の項
文献5) 原、植木、辻野 共著
「地域地質研究報告
5万分の1地質図幅 高知(13)第55号 NI-53-22-14
「北川地域の地質」」
産総研 地質調査総合センター 刊 (2014) のうち、
第8章「(四国・北山地域の)秩父帯の中部ジュラ系〜
下部白亜系付加コンプレックス」の項
https://www.gsj.jp/data/50KGM/PDF/GSJ_MAP_G050_13055_2014_D.pdf
文献6) 石塚、三宅、武田
「四国西部〜中東部の南部秩父帯三宝山ユニットに分布する緑色岩類の起源と変成」
地質学雑誌、第100巻、p267-279 (2003)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc1893/109/5/109_5_267/_pdf/-char/ja
文献7) 松岡、山北、榊原、久田
「付加体地質の観点に立った、秩父累帯のユニット区分と四国西部の地質」
地質学雑誌、第104巻、p634-653 (1998)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc1893/104/9/104_9_634/_article/-char/ja/
※ (文献7)は、全般的に参照した。
「新・分県登山ガイド 第35巻 徳島県の山」
山と渓谷社 刊 (2005)
の、それぞれの山の項
文献2) 石川、清家、三谷、谷山、井本、前田、尾野 共著
「四国百名山」
山と渓谷社 刊 (2000)
の、それぞれの山の項
文献3) 日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第7巻 四国地方」
朝倉書店 刊 (2016)
文献3−a) 文献2)のうち、
第5−1章「秩父帯の付加コンプレックス、陸棚層」の項
及び、図 5.1.10「四国東部、木沢地域の地質図」
文献4) 太田、成瀬、田中、岡田 編
「日本の地形 第6巻 近畿・中国・四国」
東京大学出版会 刊 (2004) のうち、
7−2章 「四国山地」の項
文献5) 原、植木、辻野 共著
「地域地質研究報告
5万分の1地質図幅 高知(13)第55号 NI-53-22-14
「北川地域の地質」」
産総研 地質調査総合センター 刊 (2014) のうち、
第8章「(四国・北山地域の)秩父帯の中部ジュラ系〜
下部白亜系付加コンプレックス」の項
https://www.gsj.jp/data/50KGM/PDF/GSJ_MAP_G050_13055_2014_D.pdf
文献6) 石塚、三宅、武田
「四国西部〜中東部の南部秩父帯三宝山ユニットに分布する緑色岩類の起源と変成」
地質学雑誌、第100巻、p267-279 (2003)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc1893/109/5/109_5_267/_pdf/-char/ja
文献7) 松岡、山北、榊原、久田
「付加体地質の観点に立った、秩父累帯のユニット区分と四国西部の地質」
地質学雑誌、第104巻、p634-653 (1998)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc1893/104/9/104_9_634/_article/-char/ja/
※ (文献7)は、全般的に参照した。
このリンク先の、1−1章の文末には、第1部「四国地方の山々の地質」各章へのリンク、及び、「序章―1」へのリンク(序章―1には、本連載の各部へのリンクあり)を付けています。
第1部の他の章や、他の部をご覧になりたい方は、どうぞご利用ください。
第1部の他の章や、他の部をご覧になりたい方は、どうぞご利用ください。
【書記事項】
初版リリース;(2020年4月)
;※ 元々この章は「(旧)1−7章;剣山」という章として、剣山とその周辺の
地質を説明する項として、リリース。
△改訂1;(2023年1月21日)
・第1部「四国の山々の地質」の全面改訂作業に伴い、
(旧)「1−7章 剣山」の内容は、(新)「第1−7章 剣山地(1)
剣山地の概要、及び「剣山地中核部」の山々の地質と地形」へ移行した。
・新たにこの章は、章番号を「1−8章」に変更するとともに、
「1−8章 剣山地(2) 「剣山地周辺部」の山々の地質」と題し、
「剣山地」のうち「剣山地中核部」以外の山々の地質を説明する内容として、
以下のように、全面的に書き下ろした。
・本文は、3つの節に分けて、各山域の山々の地質、地形を説明
・地質図、写真などを追加
・「参考文献」の項を作成し、記載
・「山のデータ」を追加
・「書記事項」の項を作成し、記載
・第1部「四国の山々の地質」の最初の章「1−1章」へのリンクを作成
△ 最新改訂年月日;2023年1月21日
;※ 元々この章は「(旧)1−7章;剣山」という章として、剣山とその周辺の
地質を説明する項として、リリース。
△改訂1;(2023年1月21日)
・第1部「四国の山々の地質」の全面改訂作業に伴い、
(旧)「1−7章 剣山」の内容は、(新)「第1−7章 剣山地(1)
剣山地の概要、及び「剣山地中核部」の山々の地質と地形」へ移行した。
・新たにこの章は、章番号を「1−8章」に変更するとともに、
「1−8章 剣山地(2) 「剣山地周辺部」の山々の地質」と題し、
「剣山地」のうち「剣山地中核部」以外の山々の地質を説明する内容として、
以下のように、全面的に書き下ろした。
・本文は、3つの節に分けて、各山域の山々の地質、地形を説明
・地質図、写真などを追加
・「参考文献」の項を作成し、記載
・「山のデータ」を追加
・「書記事項」の項を作成し、記載
・第1部「四国の山々の地質」の最初の章「1−1章」へのリンクを作成
△ 最新改訂年月日;2023年1月21日
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