この章では、関東山地のうち、東京都に属する「奥多摩」地域のいくつかの山について、その地質を説明します。なお東京都最高峰の雲取山は、5−7章(奥秩父)で扱います。
1)奥多摩の地形概要
まず個々の山の地質説明の前に、奥多摩の地形を概観します。
奥多摩の山々は中央部を東西方向に流れる多摩川本流(途中には奥多摩湖、上流部は丹波川)によって、以下2つの山系に分けることができます。
1)一つの山系は、三頭山(1528m)を西の頂点とする三頭山山系(仮称)です。三頭山から東側へは2つの尾根が延びています。
北北東向きに延びる尾根上には、御前山(1405m)、大岳山(1267m)、御岳山(929m)などの山が連なっています。
南東側に延びる尾根上には、途中までは山梨県との県境、その先は神奈川県との県境となっている1000m前後の山が続きます。通称「笹尾根」と呼ばれる尾根です。最後は陣馬山(857m)、高尾山(599m)です。
この2つの尾根筋の間には、多摩川の支流の一つ秋川が作る谷があり、途中で北秋川と南秋川の2つに分かれています。
2)もう一つの山系は、雲取山(2017m)を西の頂点とする雲取山山系(仮称)です。雲取山から東側へも2つの尾根が延びています。
北東へと延びる尾根は埼玉県との県境をなし、酉谷山(1718m)、三ツドッケ(1576m)、棒ノ折山(969m)などを連ねています。また川乗山(1364m)もこの尾根筋に続く山です。
もう一つの尾根は、通称「石尾根」と呼ばれる尾根筋で、七つ石山(1757m)、鷹ノ巣山(1737m)、六ツ石山(1479m)を経て、JR奥多摩駅前で多摩川の谷に落ちています。
この2つの雲取山から派生する山並みの間には、多摩川の支流、日原川(にっぱらがわ)が、雲取山山頂直下まで続く谷を形成しています。
奥多摩の山々は中央部を東西方向に流れる多摩川本流(途中には奥多摩湖、上流部は丹波川)によって、以下2つの山系に分けることができます。
1)一つの山系は、三頭山(1528m)を西の頂点とする三頭山山系(仮称)です。三頭山から東側へは2つの尾根が延びています。
北北東向きに延びる尾根上には、御前山(1405m)、大岳山(1267m)、御岳山(929m)などの山が連なっています。
南東側に延びる尾根上には、途中までは山梨県との県境、その先は神奈川県との県境となっている1000m前後の山が続きます。通称「笹尾根」と呼ばれる尾根です。最後は陣馬山(857m)、高尾山(599m)です。
この2つの尾根筋の間には、多摩川の支流の一つ秋川が作る谷があり、途中で北秋川と南秋川の2つに分かれています。
2)もう一つの山系は、雲取山(2017m)を西の頂点とする雲取山山系(仮称)です。雲取山から東側へも2つの尾根が延びています。
北東へと延びる尾根は埼玉県との県境をなし、酉谷山(1718m)、三ツドッケ(1576m)、棒ノ折山(969m)などを連ねています。また川乗山(1364m)もこの尾根筋に続く山です。
もう一つの尾根は、通称「石尾根」と呼ばれる尾根筋で、七つ石山(1757m)、鷹ノ巣山(1737m)、六ツ石山(1479m)を経て、JR奥多摩駅前で多摩川の谷に落ちています。
この2つの雲取山から派生する山並みの間には、多摩川の支流、日原川(にっぱらがわ)が、雲取山山頂直下まで続く谷を形成しています。
2)高尾山〜陣馬山にかけて
高尾山(599m)は、あまりに有名なので、細かい説明は不要でしょう。高尾山から先には城山(670m)、景信山(727m)と山稜が続き、陣馬山(857m)までの縦走コースも人気です。私も高尾山には数度登っています。
この山々は、(1)節で説明した三頭山山系(仮称)の、南側の尾根の末端部にあたります。
さて「地質図」を見ると、この一帯の地質は全て、「四万十帯」という、白亜紀にできた付加体性地質(注1)で構成されています。細かく言うと「小仏層群」という地層名がついています(文献1)。この「小仏層群」は高尾山付近を南東側の起点として北西側へと約5-10kmの幅を持って約50kmにわたって続き、大菩薩山塊あたりまで、小仏層群でできています。
(首都圏の方はご存じかと思いますが、中央道に、渋滞で有名な小仏トンネルがありますが、その付近に小仏という地名があります)
さて高尾山一帯の地質を細かく見ると、登山口(京王線の高尾山口駅)から高尾山の中腹までは、砂岩質の地質ゾーンです。山頂のちょっと手前から泥岩質の地質ゾーンに変わり、陣馬山までの稜線は、ほぼこの泥岩質の地質で出来ています。
高尾山周辺および陣馬山までの縦走ルート上には岩場らしい岩場もなく、木々が生い茂っていますが、砂岩や泥岩といった土砂に戻りやすい岩石でできているため、そういう山の様相なのだと思われます。
注1)「付加体」については、後述の補足説明の項をご覧ください。
この山々は、(1)節で説明した三頭山山系(仮称)の、南側の尾根の末端部にあたります。
さて「地質図」を見ると、この一帯の地質は全て、「四万十帯」という、白亜紀にできた付加体性地質(注1)で構成されています。細かく言うと「小仏層群」という地層名がついています(文献1)。この「小仏層群」は高尾山付近を南東側の起点として北西側へと約5-10kmの幅を持って約50kmにわたって続き、大菩薩山塊あたりまで、小仏層群でできています。
(首都圏の方はご存じかと思いますが、中央道に、渋滞で有名な小仏トンネルがありますが、その付近に小仏という地名があります)
さて高尾山一帯の地質を細かく見ると、登山口(京王線の高尾山口駅)から高尾山の中腹までは、砂岩質の地質ゾーンです。山頂のちょっと手前から泥岩質の地質ゾーンに変わり、陣馬山までの稜線は、ほぼこの泥岩質の地質で出来ています。
高尾山周辺および陣馬山までの縦走ルート上には岩場らしい岩場もなく、木々が生い茂っていますが、砂岩や泥岩といった土砂に戻りやすい岩石でできているため、そういう山の様相なのだと思われます。
注1)「付加体」については、後述の補足説明の項をご覧ください。
3)御岳山、大岳山付近の地質
御岳山(みたけさん:929m)は、有名な御岳神社が山頂付近にあり、奥多摩では有名な山の一つです。神社付近は山上とは思えない、門前町のようになっています。また、御岳山の奥には大岳山(おおだけさん:1266m)がありますが、特徴ある形の山頂部で遠くからも目立ち、(文献3)によると、三頭山、御前山とともに奥多摩三山の一つでもあります。また日本三百名山の一つでもあります。
御岳山、大岳山は、(1)節で説明したうちの、三頭山山系(仮称)の北側の尾根筋にあります。
さて「地質図」および(文献2)によると、この一帯は、ジュラ紀付加体である「秩父帯」に属しています。
まずJR青梅線の御嶽駅から説明します。御嶽駅付近は秩父帯のうち、メランジュ相(混在岩)でできています。地質図を細かく見ると、その中に細長く引き伸ばされたチャート岩体がいくつも確認できます。
御岳山の頂上手前に地質境界があり、頂上部は同じ秩父帯ではありますが、砂岩/泥岩互層でできています。
その先、大岳山までもこの砂岩/泥岩互層でできていますが、この中にも、細長く引き伸ばされたチャート岩体がいくつも存在します。
チャートという岩石は、主成分がシリカ(SiO2)で出来ている海洋性の堆積岩ですが、非常に硬くて浸食にも強いのが特徴です。
「地質図」を詳しく見ると、途中にある険しい「奥の院」ピークや、稜線から少し飛び出たような形状をした大岳山の山頂部は、このチャート岩体でできています。
また稜線の南側にある沢にはいくつかの滝がありますが(綾広の滝、七代の滝)、ちょうど滝のある部分はチャート岩体でできています。浸食に強く、川の浸食力に抗して、滝ができたのではないかと思われます。
御岳山、大岳山は、(1)節で説明したうちの、三頭山山系(仮称)の北側の尾根筋にあります。
さて「地質図」および(文献2)によると、この一帯は、ジュラ紀付加体である「秩父帯」に属しています。
まずJR青梅線の御嶽駅から説明します。御嶽駅付近は秩父帯のうち、メランジュ相(混在岩)でできています。地質図を細かく見ると、その中に細長く引き伸ばされたチャート岩体がいくつも確認できます。
御岳山の頂上手前に地質境界があり、頂上部は同じ秩父帯ではありますが、砂岩/泥岩互層でできています。
その先、大岳山までもこの砂岩/泥岩互層でできていますが、この中にも、細長く引き伸ばされたチャート岩体がいくつも存在します。
チャートという岩石は、主成分がシリカ(SiO2)で出来ている海洋性の堆積岩ですが、非常に硬くて浸食にも強いのが特徴です。
「地質図」を詳しく見ると、途中にある険しい「奥の院」ピークや、稜線から少し飛び出たような形状をした大岳山の山頂部は、このチャート岩体でできています。
また稜線の南側にある沢にはいくつかの滝がありますが(綾広の滝、七代の滝)、ちょうど滝のある部分はチャート岩体でできています。浸食に強く、川の浸食力に抗して、滝ができたのではないかと思われます。
4)三頭山とその周辺
(1)節で説明した三頭山山系(仮称)の盟主が、三頭山(1528m)です。
三頭山付近は、「地質図」によると、「四万十帯」の付加体性堆積物でできています。なお地質学的な区分では「小河内層群」という地層名がついていますが、構成している地質は、「小仏層群」と大きな違いはないようです(文献1)。
ここでは三頭山の北側にある奥多摩湖から三頭山までの地質について説明します。
まず奥多摩湖の周辺は、メランジュ相の堆積岩でできています。
三頭山の中腹まではメランジュ相のゾーンですが、中腹に地質境界があり、山頂付近は砂岩層でできています。これも付加体性の堆積岩です。
なお、「地質図」をよく見ると山頂付近に点々と「閃緑岩」(せんりょくがん)という深成岩の岩体が分布しています。山頂の東側は現在、「都民の森」として整備されているようですが、この付近にも閃緑岩が分布しています。
閃緑岩は、日本列島では地表に露出しているケースが少ないのですが、(文献4)によると新鮮なものは黒白のつぶつぶが明瞭な岩石です。ただし地表に露出している閃緑岩は、風化によって黒い部分(角閃石)が変化して緑っぽくなるようです。いずれにしろ、砂岩とは明確に違うので、判別は可能ではないかと思います。
三頭山付近は、「地質図」によると、「四万十帯」の付加体性堆積物でできています。なお地質学的な区分では「小河内層群」という地層名がついていますが、構成している地質は、「小仏層群」と大きな違いはないようです(文献1)。
ここでは三頭山の北側にある奥多摩湖から三頭山までの地質について説明します。
まず奥多摩湖の周辺は、メランジュ相の堆積岩でできています。
三頭山の中腹まではメランジュ相のゾーンですが、中腹に地質境界があり、山頂付近は砂岩層でできています。これも付加体性の堆積岩です。
なお、「地質図」をよく見ると山頂付近に点々と「閃緑岩」(せんりょくがん)という深成岩の岩体が分布しています。山頂の東側は現在、「都民の森」として整備されているようですが、この付近にも閃緑岩が分布しています。
閃緑岩は、日本列島では地表に露出しているケースが少ないのですが、(文献4)によると新鮮なものは黒白のつぶつぶが明瞭な岩石です。ただし地表に露出している閃緑岩は、風化によって黒い部分(角閃石)が変化して緑っぽくなるようです。いずれにしろ、砂岩とは明確に違うので、判別は可能ではないかと思います。
5)川乗山と日原周辺
1)川乗山
JR奥多摩駅から日原川に沿って行き、川乗谷沿いのルートで川乗山山頂までの地質を説明します。
奥多摩駅から日原川沿いの道路沿いは主に付加体の構成要素の一つ、泥岩でできています。川乗川出合から川乗谷沿いに行くと、しばらくは泥岩ゾーンですが、その先は変化に富んでいます。まず聖滝付近は部分的に玄武岩ゾーン、さらにチャートゾーン、砂岩/泥岩互層ゾーン、メランジュ相ゾーン、百尋の滝付近で再びチャートゾーンと、目まぐるしく地質が変化します。谷筋から離れて山頂への急登はチャート岩体の部分を通り、川乗山の山頂部はメランジュ相ゾーンです。
私はこのルートを通ったことがありませんが、谷沿いにそれらの地質、岩石が出ていれば、変化に富んだ岩石、地質見学ができるでしょう。
2)日原(にっぱら)地域。
日原川沿いの日原地域は、古くから「日原鍾乳洞」で有名です。一般に鍾乳洞とは、石灰岩の地質の部分において、主に地下水の浸食によってできた洞窟です。日本では、山口県の秋芳洞(しゅうほうどう)や高知県の龍河洞(りゅうがどう)なども観光名所として有名ですが、いずれも石灰岩体が浸食されてできた鍾乳洞です。
日原付近の地質図を見ると、秩父帯のメランジュ相の地質ゾーンの中に、北西―南東方向に細長く延びた、石灰岩の岩体が多数分布しています。日原鍾乳洞のある場所も、石灰岩の地質です。またこの付近の石灰岩体の一部では、石灰岩の採掘も何ヶ所か、なされているようです。
これらの石灰岩体は、元々、海洋プレート上にできた海底火山の頂上部に生育していたサンゴ礁が元となっています。サンゴ礁は石灰岩と同じ、炭酸カルシウム(CaCO3)で出来ています。海洋プレートの移動によって、海底火山体とともにサンゴ礁由来の石灰岩部分が、海洋プレート沈み込み帯で、バラバラになりつつ付加体の一部となったものが、付加体中の石灰岩体です。
秩父帯はジュラ紀の付加体ですが、石灰岩ができた時代はさらに古く、ペルム紀―トリアス紀(三畳紀)−ジュラ紀初期にかけてです。
なお秩父帯では他の地域でも結構、石灰岩体が多く見られます。その一つは次の章で説明予定の、秩父の名山、武甲山です。
JR奥多摩駅から日原川に沿って行き、川乗谷沿いのルートで川乗山山頂までの地質を説明します。
奥多摩駅から日原川沿いの道路沿いは主に付加体の構成要素の一つ、泥岩でできています。川乗川出合から川乗谷沿いに行くと、しばらくは泥岩ゾーンですが、その先は変化に富んでいます。まず聖滝付近は部分的に玄武岩ゾーン、さらにチャートゾーン、砂岩/泥岩互層ゾーン、メランジュ相ゾーン、百尋の滝付近で再びチャートゾーンと、目まぐるしく地質が変化します。谷筋から離れて山頂への急登はチャート岩体の部分を通り、川乗山の山頂部はメランジュ相ゾーンです。
私はこのルートを通ったことがありませんが、谷沿いにそれらの地質、岩石が出ていれば、変化に富んだ岩石、地質見学ができるでしょう。
2)日原(にっぱら)地域。
日原川沿いの日原地域は、古くから「日原鍾乳洞」で有名です。一般に鍾乳洞とは、石灰岩の地質の部分において、主に地下水の浸食によってできた洞窟です。日本では、山口県の秋芳洞(しゅうほうどう)や高知県の龍河洞(りゅうがどう)なども観光名所として有名ですが、いずれも石灰岩体が浸食されてできた鍾乳洞です。
日原付近の地質図を見ると、秩父帯のメランジュ相の地質ゾーンの中に、北西―南東方向に細長く延びた、石灰岩の岩体が多数分布しています。日原鍾乳洞のある場所も、石灰岩の地質です。またこの付近の石灰岩体の一部では、石灰岩の採掘も何ヶ所か、なされているようです。
これらの石灰岩体は、元々、海洋プレート上にできた海底火山の頂上部に生育していたサンゴ礁が元となっています。サンゴ礁は石灰岩と同じ、炭酸カルシウム(CaCO3)で出来ています。海洋プレートの移動によって、海底火山体とともにサンゴ礁由来の石灰岩部分が、海洋プレート沈み込み帯で、バラバラになりつつ付加体の一部となったものが、付加体中の石灰岩体です。
秩父帯はジュラ紀の付加体ですが、石灰岩ができた時代はさらに古く、ペルム紀―トリアス紀(三畳紀)−ジュラ紀初期にかけてです。
なお秩父帯では他の地域でも結構、石灰岩体が多く見られます。その一つは次の章で説明予定の、秩父の名山、武甲山です。
(補足説明)「付加体」について
「付加体」はこの第5部 関東山地の部ではよく出てくる用語なので、(文献5)、(文献6)に基づき、ここで簡単に説明しておきます。
現在の日本列島(北海道から九州まで)は、南からフィリピン海プレートが、東から太平洋プレートが沈み込む、海洋プレート沈み込み帯に沿った島弧であり、日本列島自体は陸側プレートの上に乗っています(ユーラシアプレートおよび北米プレート)。
海洋プレートが陸側プレートの下に沈み込む場所は、日本海溝や南海トラフと言った細長い深海になっていますが、その陸側では、陸側から流れ込む礫、砂、泥、および海洋プレート上の玄武岩、チャート、石灰岩といった岩石、地質が、陸側プレートの側面に、押し付けられるようにして堆積することがあります。この沈み込み帯に近い場所でできる堆積体を、プレートテクトニクス用語では「付加体」と呼びます。
日本列島の堆積岩の多くがそういう「付加体」型地質でできていることは、1980年代に判明し、その後、「付加体」の生成時代や分布域をベースに、日本列島の地質構造は、二十数個の地帯(〇〇帯)に分けられました(但し「〇〇帯」の全部が付加体型の地質ではありません)。
この部にでてくる「四万十帯」は、白亜紀(一部は古第三紀)の付加体で、「秩父帯」は、ジュラ紀の付加体です。また「三波川帯」は、付加体の一部が地下深くまでいったん沈み込んで、高圧下で変成作用が生じて、結晶片岩という岩石に変化した変成岩帯です。
なお合わせて「メランジュ」という地質学用語についても説明しておきます。
メランジュ(Melange)とはフランス語起源の言葉で、混合(物)を意味し、英語のMixtureとほぼ同義語です。日本語では「混在岩」(こんざいがん)と訳します。
上記の付加体生成プロセスの中で、陸源成分(礫、砂、泥)と、海洋源成分(玄武岩、チャート、石灰岩)とが、強い剪断力などでごちゃごちゃに混ぜられて、その名の通り、大小のいろんな岩石がまじりあった地質のことを言います。
現在の日本列島(北海道から九州まで)は、南からフィリピン海プレートが、東から太平洋プレートが沈み込む、海洋プレート沈み込み帯に沿った島弧であり、日本列島自体は陸側プレートの上に乗っています(ユーラシアプレートおよび北米プレート)。
海洋プレートが陸側プレートの下に沈み込む場所は、日本海溝や南海トラフと言った細長い深海になっていますが、その陸側では、陸側から流れ込む礫、砂、泥、および海洋プレート上の玄武岩、チャート、石灰岩といった岩石、地質が、陸側プレートの側面に、押し付けられるようにして堆積することがあります。この沈み込み帯に近い場所でできる堆積体を、プレートテクトニクス用語では「付加体」と呼びます。
日本列島の堆積岩の多くがそういう「付加体」型地質でできていることは、1980年代に判明し、その後、「付加体」の生成時代や分布域をベースに、日本列島の地質構造は、二十数個の地帯(〇〇帯)に分けられました(但し「〇〇帯」の全部が付加体型の地質ではありません)。
この部にでてくる「四万十帯」は、白亜紀(一部は古第三紀)の付加体で、「秩父帯」は、ジュラ紀の付加体です。また「三波川帯」は、付加体の一部が地下深くまでいったん沈み込んで、高圧下で変成作用が生じて、結晶片岩という岩石に変化した変成岩帯です。
なお合わせて「メランジュ」という地質学用語についても説明しておきます。
メランジュ(Melange)とはフランス語起源の言葉で、混合(物)を意味し、英語のMixtureとほぼ同義語です。日本語では「混在岩」(こんざいがん)と訳します。
上記の付加体生成プロセスの中で、陸源成分(礫、砂、泥)と、海洋源成分(玄武岩、チャート、石灰岩)とが、強い剪断力などでごちゃごちゃに混ぜられて、その名の通り、大小のいろんな岩石がまじりあった地質のことを言います。
(参考文献)
文献1)日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第3巻 関東地方」朝倉書店 刊(2008)
のうち、2−2章「関東山地」、2-2-8節「四万十帯」の項
文献2)日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第3巻 関東地方」朝倉書店 刊(2008)
のうち、2−2章「関東山地」、2-2-7節「秩父帯南帯」の項
文献3)「日本三百名山登山ガイド・中」
山と渓谷社 刊 (2000)
のうち「大岳山」の項
文献4)西本 著
「観察を楽しむ 特徴がわかる 岩石図鑑」ナツメ社 刊 (2020)
のうち「閃緑岩」、「チャート」の項
文献5)小川、久田 著、 日本地質学会 編
「付加体地質学」 共立出版 刊 (2005)
文献6)平 著
「日本列島の誕生」岩波書店 刊 (1990)
「日本地方地質誌 第3巻 関東地方」朝倉書店 刊(2008)
のうち、2−2章「関東山地」、2-2-8節「四万十帯」の項
文献2)日本地質学会 編
「日本地方地質誌 第3巻 関東地方」朝倉書店 刊(2008)
のうち、2−2章「関東山地」、2-2-7節「秩父帯南帯」の項
文献3)「日本三百名山登山ガイド・中」
山と渓谷社 刊 (2000)
のうち「大岳山」の項
文献4)西本 著
「観察を楽しむ 特徴がわかる 岩石図鑑」ナツメ社 刊 (2020)
のうち「閃緑岩」、「チャート」の項
文献5)小川、久田 著、 日本地質学会 編
「付加体地質学」 共立出版 刊 (2005)
文献6)平 著
「日本列島の誕生」岩波書店 刊 (1990)
このリンク先の、5−1章の文末には、第5部「関東西部の山々の地質」の各章へのリンク、及び、序章(本連載の各部へのリンクあり)を付けています。
第5部の他の章や、他の部をご覧になりたい方は、どうぞご利用ください。
第5部の他の章や、他の部をご覧になりたい方は、どうぞご利用ください。
【書記事項】
初版リリース;2020年11月29日
△改訂1;文章見直し、一部修正。5−1章へのリンク追加。書記事項追加。
△最新改訂年月日;2022年1月4日
△改訂1;文章見直し、一部修正。5−1章へのリンク追加。書記事項追加。
△最新改訂年月日;2022年1月4日
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高尾山口駅は京王線です(小田急ではありません)。
ああ、そうでしたね、ケアレスミスです。
修正しておきます。
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