塩見岳-間ノ岳-北岳 〜その先へ〜 S13
kimichin2
体力度について
- GPS
- 29:55
- 距離
- 40.0km
- 登り
- 3,858m
- 下り
- 3,992m
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標高グラフを拡大コースタイム
- 山行
- 6:32
- 休憩
- 0:47
- 合計
- 7:19
- 山行
- 6:39
- 休憩
- 0:16
- 合計
- 6:55
- 山行
- 8:19
- 休憩
- 1:05
- 合計
- 9:24
| 天候 | 8/13晴れ（〜11時）のち雨 8/14晴れ（〜11時半）のち雨 8/15晴れ（〜8時半）のち雨 8/16雨 |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2018年08月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
電車 バス タクシー
8/16 広河原BS発8:00（山梨交通、1130円）芦安BS着9:00、（入浴、食事）発11:00（電気自動車、500円、※2）南アルプスゲートウェイ着12:00（買物、休憩）白根西IC前BS発14:13（中央高速バス、2050円）バスタ新宿着17:15（渋滞45分遅れ） ※1 路線バスと異なり、タクシーはゲートまでなので、そこから40分程度歩かなければならない。 ※2 500円は登山車専用価格。一人乗りの電気自動車なので、ザックがトランクに収納できるか事前確認が必要。芦安から白根西IC前BS付近の基地まで約20分程で着く。法定速度60km、市内寄り道（食事、入浴、買い物）可。 http://minamialps-gateway.com/main/wp-content/uploads/2018/06/0a66f0040f2299f4ad89c053a57425a2.pdf 高速バスでなくやっぱり甲府経由で、の場合には、ゲートウェイ付近のバス停から路線バスで。 |
| コース状況／ 危険箇所等 |
塩見岳への岩場 長野県のグレーティングによるとD難度に指定されているが、岩登りの基本をマスターしていれば転落などの恐怖感無く進める。むしろ先行者の起こす落石や雨後の滑りに留意すべき。 仙塩尾根 アップダウンの続く長大な尾根だが、歩く人も少なく、晴天であれば静かで気持ちの良い稜線歩きを楽しめる。三峰岳の岩場を除き危険箇所はなかった。 間ノ岳、北岳山荘間 言わずと知れた3000mの天空稜線。晴天であればさぞかし気持ちの良い時間を過ごせたことだろう。 |
| その他周辺情報 | 塩見小屋 要予約、寝袋（2/3スペース）、内外に共用部なし、水有料 熊の平小屋 水（おいしい）、客室2段（高さ十分）、2階客室入口で1階と接続（よくできたシステム） 白根御池小屋 要予約、水（おいしい）、ソフトクリーム（おいしい）、談話室、ランチメニュー、客室狭い。 白峰会館（芦安） 山梨交通管理ゆえバス停の目の前。9:00から入浴可（700円）。食事は10:30から。メニュー豊富。 道の駅しらね農産物直売所（南アルプス市在家塚587-1） 目の前に白根西IC前BS。ぶどう、さくらんぼ、すもも（おいしい） |
写真
それにしてもよくできたシステム。受付後、外階段から2階の客室へ、内階段を通って1階の談話室兼食堂へ。これにより受付が煩雑とならず、客室の出入りもスムーズ。
9
15日4時52分、感謝しながら小屋を後にする。登山口から1日では到達できない立地だが、ぜひ再訪したい小屋だった。小屋番始めスタッフも丁寧かつ親切な対応で気持ちよかった。
6
正午過ぎに北岳肩の小屋に到着。これから2時間かけて御池小屋まで足を延ばすか、予定どおり大いに悩む。明日のご来光を得るために3000mの宿にするのか、ソフトクリームを食べられる評判の良い宿にするのか。まだ体力は残っている。出発した。
4
大樺沢コース分岐点。登山者が絶え間なく登って来るようになった。或る学生パーティーの一人が、「北岳に来ただけ」になっちゃうの嫌だ、とつぶやいていた。
5
時は流れて、目の前には一人乗りの電気自動車。時速60�劼泙能个襦０屋造�ら高速バスのバス停近くまで約20分、登山者専用価格で500円。風が気持ちよく楽しかった。
9
感想
それで先生、お盆休みには山へ…
山好きな医師は、キーボードを叩きながら聞こえないふりをしている。
あの、と言いかけた時、
「何かあっても対応できませんよ。私はその頃マッターホルンですから。」
いつもながらのジョークに感心した。
とにかくストップがかからなかったので、とっとと準備を始めた。
週末、十分な準備をして、発車40分前にはロビーに着いた。相変わらず暑い。喧騒は白馬、上高地方面が出ると少し収まる。
定員50名程度のバスに21名。空いているのに相変わらず眠れない。うとうとしているうちに3時半、伊那大島駅に着いた。9名を降ろし、バスは走り去る。13日未明、マルモタクシーの運転手は元気だ。
1時間20分の早朝ドライブを経て、鳥倉ゲートに到着、すぐに歩き始める。登山口まではおよそ40分、ウォーミングアップにちょうど良い。ただでさえ久しぶりの登山、出だしが肝心だ。登山口で準備体操を念入りに行い、一歩踏み込んだ。
10分後、病み上がりということを、30分後、寝不足を思い知らされた。こんなにも身体が動かないとは。不安が見事に的中し苦笑いしていると、水色の服にそれより少し濃い目のザックを背負った女性が、すっと追い抜いて行った。よし、小屋に着くまでに追いつこう。目標が定まり、ようやく手足が動き出した。
樹林帯の中、三伏峠めざし急登をこなしてゆく。「ほとけの清水」に励まされながら、いつもらしさを取り戻してゆく。けれどそれも束の間、峠前で3分毎に歩を止める。結局、峠小屋前のベンチに座り込み、立てなくなってしまった。
10分経過、意を決し、行程後半へ一歩踏み出した。三伏山を過ぎ、本谷山には予定よりも早着。このまま行こう、そう思ったとき、雨粒が額に当たった。予報どおり来なくてもよい。雨雲を見上げながら、足早に目的地へと向かう。が、やはり初日7時間超は厳しい。小屋の幻影を幾つか見た末、12時半に塩見小屋に着いた。俄に立てた目標は達成できなかったが、予定よりも早い。
タオルを頭に載せて受付を済ます。一息つきたかったが、その場所は無い。ダカラとポカリしか無い。仕方なく客室に入ると、なぜか上段に集中させている。寝具は寝袋、壁の番号の間隔が小さい。眠れない夜に悶える姿が垣間見えた。
いつの間にか雨は上がっていた。フリーズドライのパスタを小屋前のベンチで食す。今のうちに寝ておこう。いつものように午睡に入り、目覚めると既に夕食の準備が始まっていた。こちらもとっとと食べてもう一度眠ろう。パンと紙パックジュースが妙に旨い。
果たして、上段ゆえの暑苦しさ、演劇界にデビューできると思えるほど大きないびき。ふと横を見ると、近い。寝袋が触れ合っている。たまらず小屋から離れたトイレを往復した。星空がきれいだった。
翌朝、3時半には寝袋を畳み、小屋前のベンチに座ってコーヒーを淹れた。日の出を待った。遠く山影のため、ご来光は5時過ぎとなった。塩見岳の巨大なシルエットが、明るさを増した空に映し出される。今日は明るくなってから歩こう、そう決めていた。ゆっくりと森林限界を越えて行った。
いつしか目前には、天狗岩が現れた。予習はかなりしてきたつもりだ。落ち着いて岩に取り付いた。マーカー多く、ルートには迷わない。スタンスを定めることに集中できた。
夢中で攀じ登る。途中振り返って何枚か写真を撮ったこと以外、あまり覚えていない。とにかく今の私にとって、山頂直下の壁は明らかにD難度だった。転落の恐怖は無く、上部に人の姿も無く落石の心配は無かったが、右と左を見誤り、一度進退窮まりそうになった。
情けない思いは、その瞬間吹き飛んだ。山頂に立ち、富士山の姿を目にし、久しぶりに味わう達成感に目が潤んだ。通院中も何度この瞬間を思い描いていたことか。四周何も遮るものの無いその場所にずっといたかった。
東峰に進む。そして振り返った。見たかった光景がそこにあった。西峰と空と中央アルプス。再び目が潤みそうになった。来て良かった。心から嬉しかった。十分に堪能したのち、これから向かう北部の山々を望みながら、ゆっくりと歩き始めた。
東へ延びる道は、稜線にはっきりと刻まれている。右手に長大な蝙蝠尾根を見ながらまっすぐに進んだ。やせ尾根、ザレ場を慎重に過ぎ、そしてコースアウトした。何を思ったか尾根から外れ、薄い踏み跡（に見えた）を辿って下り始めた。しばらく進み、ようやく我に返る。明らかにおかしい。
ちょうど人が通りかかった。合ってますよね、見上げながらそう言うと、彼は前方を指さし、こっちですよ、呆れたように返ってきた。慌てて引き返す。危うくアルプスで途方に暮れるところだった。
傷心を引きずりながら歩くと、蝙蝠尾根への分岐点に辿り着いた。塩見岳を後にしてから45分が経過していた。先刻の人は、その尾根へ進んでいた。一度心配そうにこちらを振り返った。
前方に北荒川岳、安倍荒倉岳を確認し、遠く仙丈ヶ岳、間ノ岳を望みながら仙塩尾根を北へ進む。肩の広場なる少し尾根の広がった幕営適地（無論禁止だが）で振り返ると、塩見岳の猛々しい姿がそこに在った。こちら側から望んでも威風堂々に変わりはない。
強風に晒され変形した、シラカンバの造形美に見とれていると、前方に小高い丘のような北荒川岳が現れ、そして唐突にキャンプ場跡に着く。ここが2700メートルの稜線上とは思えない、のどかで不思議な場所だった。
北荒川岳を過ぎ、新蛇抜山への鞍部を通過する頃、例によって天候が急変する。竜尾天晴という眺望に優れているはずの場所からは何も見えず、やや早足になっていた。昨日のようにレインハットに撥水性のあるシャツ、とはゆかないほどの強い雨が降ってきた。11時半、不本意ながら雨具を取り出した。
安倍荒倉岳の山頂通過がいつだったかわからないまま、無心で進み、12時40分、ようやく熊の平小屋に到着した。受付奥のコーラの誘惑に勝てず、下山時の楽しみを一つ減らした。
それにしても動線をよく考えた作りの小屋だった。入口を分離し、受付前の混乱を解消し、客室を通ってから共用部に入るため、食堂兼談話室は清潔さを保てる。水場とトイレは建物外だが、その遠さが気にならなかった。客室は2段式で上下いずれも高さのある空間だった。スタッフの丁寧な説明や親切な対応も記憶に残っている。
3泊のうち、唯一熟睡できた一晩を経て、8月15日の夜明けを迎えた。今日は5時前に出発する。ほどなくして樹林帯を抜けると、左手に中央アルプスが浮かび、右手には重そうな西農鳥岳の姿があった。そして振り返ると遠く塩見岳、感慨深かった。
三国平で農鳥岳への道を分けると、三峰岳に取りかかる。右手東南方向、西農鳥岳の左に富士山の姿を望み、緩やかに登ってゆくと、目前に岩稜帯が現れる。大したことは無いだろう、果たして人の往来のあるルート上でストックを仕舞うこととなってしまった。
かれこれ長めの岩場を過ぎ、6時45分三峰岳山頂に到達する。剱岳と同じく3000メートルに1メートル満たない標高、360度の眺望、百高山に認められても良さそうだが、間ノ岳に近すぎるのだろうか。直近で白峰三山に対面できる山なのに。
野呂川方面への分岐点で仙塩尾根に別れを告げ、間ノ岳へ登り始める頃、今日も急変した。まだ7時過ぎ、早すぎる。霧は瞬く間に山々を覆い、山頂に到達する頃にはすっかり包まれてしまった。驚くほどの人の多さではない。急変前の眺望を楽しんだ人々が、そそくさと戻ったからかもしれない。諦めて北岳に向かう。
天空の稜線は、時折霧を晴らしてくれたが、遠望叶わず、北岳もベールに包まれたままだった。やがて中白峰山を過ぎる頃に降り始めた。今日は強風も伴っている。50分後、北岳山荘に着き、サイダーを購入し、北岳への登頂を考えた。だめなら引き返すか捲けばいい、とりあえず出発した。
幸い、時折風は収まり、青空も雲の間から見えた。けれどもそれも束の間、再び風雨に晒される。渋滞個所の梯子を越えて吊尾根分岐点、さらに急坂を経て3193メートルの山頂に到達した。意外に広い山頂には多くの人が居た。何も見えない雲の中でサイダーを飲み干した。およそ20分の滞在で後にする。
肩の小屋で予定どおり大いに悩んだ。熊の平を出発してから7時間余りが経過していた。頭の中を、肩の小屋から得るご来光と、御池小屋の中のソフトクリームと、草すべりで転倒する姿が過ぎった。幸い、体力は残っている。予約をキャンセルして雨中、下り始めた。
急坂を慎重に、写真は1枚で十分なほどの単調さに耐えながら下りる。コースタイムどおり2時間後、御池が目に映る。設備の整った清潔な小屋まであと僅かだった。
受付を済まし、逸る心を抑えながら着替え、午睡の準備をして1階に下りる。とうとうソフトクリームを手にした。山小屋で味わうそれは、想像以上に充たしてくれた。ランチタイムが終わっていたので、カップ麺を食す。そして午睡。このお蔭でほとんど眠れなかった一晩を凌ぐことができた。それは、山小屋の宿泊に慣れないが故なのか、或いは客室の狭さによるものなのか、いずれにしても、かの乱心に同室の皆も同様に寝不足にさせられただろう。
翌朝になっても雨は止まず、夜明けにもかかわらず樹林帯の中は薄暗かった。ほぼ水平に北上したのち、東進、急坂を下る。なぜかストックを使うことを忘れていた。手さぐりで滑りを制御しつつ下りた。やがて一番バスに乗車してきた人々とすれ違うようになった。広河原は近い。
意外にも甲府行き一番バスは、北沢峠からのバス到着後、満員になった。一刻も早く湯に浸かりたく、芦安までぼんやりと窓の外を眺めていた。到着する9時には入浴可となる。バスを降りるや否や駆け込んだ。
4日ぶりの食事を楽しんでいるうちに雨は上がった。そして外には一人乗り用の電気自動車が有った。手続きを済まし、説明を受けて、出発した。風を受けながら気持ち良く市街地へ下りてゆく。市中を走り回って1時間後、拠点に到着した。楽しかった。直売所で果物を購入し、付近のレストランで高速バスを待つ。心地よい疲労を感じていた。見上げれば青空と夏雲。諦めかけていた山行ができたこと、心から感謝した。
約束の2週間が経ち、診療所を訪れた。
先生、南の中部から北部へ縦走してきました。
私がそう言うや否や、後ろから大きな本を持ち上げ、
「ここまで行ったんだけど、タイムリミットでガイドに止められて下山ですよ」
彼は笑いながらマッターホルンの肩を指さした。
こっそり拍手
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kimichin2さま
こんばんは｡
4日間本当におつかれさまでした｡
お天気が目まぐるしかったようですが､無事下山されてよかったです｡
雨のお山歩きも楽しいひとときに転化させてしまうkimichin2さまはさすがだなあと思いました｡
雲の間からの富士山きれいですね｡
3,000m級のお山から見る富士山は格別ですね｡
私もしばし見とれてしまいました｡
｢西農鳥岳、重そうだ｣と表現されていらっしゃいましたが､お写真から西農鳥岳のずっしり感が伝わってきました｡ちょっと笑ってしまいました｡
通院されていらっしゃるとのことでしたが､くれぐれもお大事になさってください｡
レコ楽しく拝見させていただきました｡
ありがとうございました｡
reochi19様
こんにちは。
久しぶりの山行だったので、全く疲れておらず、翌日からバリバリ仕事をしているのです。
塩見岳から富士山を見ること、東峰から西峰を望むこと、仙塩尾根を少しでも歩くこと、熊の平小屋に宿泊すること、北岳に登頂すること、御池小屋でソフトクリームを食べること、芦安で温泉に浸かること、電気自動車を運転して高速バス停までゆくこと、目的のほとんどが叶い、満足しています。
北岳山頂にいるときだけは晴れて欲しかったのですが。
晴天と雨天の繰り返しでしたが、それも苦にならず、また山に行きたいと心から思っています、体調には十分気をつけて。
reochi19様も、怪我無く、山登りを楽しまれますよう。
kimichinさん
こんにちは。
長距離をお疲れ様でした。
体調はもう大丈夫なのでしょうか？
趣味のことをわかってくれるドクターが身近にいらして、良いですね！
ジョーク交じりにちゃんと注意もしてくれて、許可もしてくれるなんで、優しい気持ちが伝わってきますね。
塩見岳は私も行ってみたいところです！
娘が少し前に高校山岳部で、北岳に登り熊の平でテン泊をしたそうなのですが、熊の平から見た塩見岳方面の道は、何だか不思議な雰囲気(怖い？！）だったそうです。
そっち方面には行かずに農鳥へ向かい下山したようですが、そんな話を聞いたので、興味があります。
これかれも体調にお気をつけてください。
素敵な文章のレコを楽しみにしていますので。
maple19様
コメントをありがとうございます。
体調は山から帰ってすっかり戻りました。
塩見岳で見たかった光景を目にし、熊の平で快適な滞在ができたからかもしれません。
確かに、仙塩尾根側から望む塩見岳は迫力があり、神々しさを感じます。
かかりつけの医師とは、カウンセリングも受けていて、月に一度会います。
山の話で盛り上がります。
次の患者さんを忘れるほどではありませんが。
これからも臨場感あふれるレコを楽しみにしています。
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