中の湯‐焼岳‐上高地 〜あの頃、河童橋から先は聖域だったから〜 A54
- GPS
- 09:36
- 距離
- 17.2km
- 登り
- 1,388m
- 下り
- 1,277m
コースタイム
- 山行
- 8:20
- 休憩
- 1:18
- 合計
- 9:38
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
上高地バスターミナル発15:08(濃飛バス、1,160円)平湯バスターミナル着15:32 |
コース状況/ 危険箇所等 |
上高地への下山コースが変化に富み楽しい。山頂直下の急坂、伸びやかな稜線歩き、近そうで遠い焼岳小屋、ほぼ垂直の長いはしご、大正池と梓川沿いの散策路。 |
その他周辺情報 | 穂高荘山がの湯 温泉は内風呂、露天風呂、サウナ共に広く、気持ちが良い。東館(穂高荘倶楽部)館内清潔でリラクゼーションスペースも充実。日帰り1,200円(翌朝10時までOK)、特別休憩室は1泊1,900円。 |
写真
感想
そういえば今年は北へ行っていない。1ヶ月、前穂か焼岳か、迷っていた。1週間、天気図とtenki.jp+moreの画面を睨みながら、晴天を願う。週末、昨年同様、前線は南下してくれた。この上ない好天に恵まれた。
23日午前5時すぎ、中の湯バス停で、快適だったさわやか信州号を降りる。車内は自分も含めほとんどが50代から60代の方々、グリーンカーではなくシルバーカーだった。登山届を提出し、夜明け前、安房峠への道を上ってゆく。九十九折、車が次々に近づき走り去る。
1時間後、ようやく登山口に着いた。路肩にもあふれる車、こののち到着する人はどこに停めるのだろう。つい余計な心配をしてしまう。登山口前に駐車された車の合間を抜けてゆっくりと歩き始めた。
久しぶりに、前後に人の気配を感じて登る。譲り譲られ、樹林帯を進んだ。出発から3時間が経とうとする頃、異変に気付いた。眠い、息苦しく、足が上がらない。徐々にそれは強くなり、森林限界を越える頃には、岩に腰を下ろして休むことを繰り返した。
人目も憚らず岩の上に横になる。数歩進んでは立ち止まる。前方のコルが一向に近づかない。既に高山病であることに気づいていた。こういうことなのか、下山すべきか迷ったが、火口縁上で眠ることを期してなおも歩み続けた。
9時半、コルに到達、すぐに横になった。すぐに眠れた。25分後ようやく身体を起こした。なんだかんだ言って予定どおりの通過時間だった。硫黄の臭いに咽ながら北峰を目指す。回復を感じていた。肩にザックを待たせて、山頂に向かった。
どう表現したら良いのだろう。360度の眺望を楽しむ前に、先ず人の多さに驚かされた。車の多さから想像はしていたが、明らかにそれを超えていた。笠、槍、穂高、常念、八つ、南ア、乗鞍。美しい被写体を収め、早々にそこを後にする。とはゆかなかった。唯一の岩場の通過、登り下り譲り合わなければならないはずが、登り方向のみ動いていた。長い列が出来、ようやく前方で誰かが口を開いた。
大したロスでは無かったが、確実に気疲れした。肩まで下り、ザックをすぐには持ち上げられなかった。再び穂高連峰に見とれ、聖地上高地を望んだ。そして数分後、その上高地に向け下り始めた。
中尾峠までの300メートル差を一気に下りる。急坂そして伸びやかな尾根道、秋空が気持ち良く、先ほどまでの悪夢を忘れられそうだった。展望台まで登り返し、振り返る。焼岳の北側は荒々しさが強調される。なぜかファンタジアの「禿山の一夜」が思い浮かんだ。やはり忘れられそうもない。
焼岳小屋はなかなか現れなかった。山頂直下から望んだ緑色の屋根、随分遠かったことを知った。冷たい飲み物の誘惑を振り切り、残り2時間をかけて下りる。いつもながら目的地を下山後に設定していた。そうすることで下りの緩みを防ぐことができる。今日は河童橋たもとの上高地ソフトである。
草原から樹林帯へ。ストックに頼りながら足早に進み、スラブ状の岩場を下りると長いはしごが待っている。その後も幾つかのはしごが現れ、なだらかな道が続くようになった頃、急に疲れを感じ始めた。何人に道を譲っただろう。登山口まで長い道のりになった。
大正池を右手に感じながら東に向かう。やがて道が梓川に沿うようになると田代橋は近い。西穂高岳登山口のベンチで3分間腰を下ろす。目的地のあの橋までおよそ1.5キロメートル、俄かに元気を取り戻した。
ここに来るのは何年ぶりだろう。河童橋のたもとは、いつもどおり大勢の観光客と登山者であふれていた。思い出せないほど多くの人とこの橋を渡った。登山者として、観光客として。橋を背に撮った写真が幾つも思い浮かんだ。
されど感傷に浸っている場合ではない。目的を果たさねば。梓川を見ながら食べるそれは、予想をはるかに上回る旨さだった。その後味の良さに浸りながらターミナルまでの道を歩む。明日の乗鞍岳を前に、今日はよく眠れる気がした。入浴後の緩みと飛騨牛の余韻に浸りながら。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する