夜叉神峠-鳳凰三山-御座石鉱泉 〜たどりついたあとに〜 S2
- GPS
- 26:36
- 距離
- 18.5km
- 登り
- 1,894m
- 下り
- 2,203m
コースタイム
- 山行
- 4:55
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 5:15
- 山行
- 5:39
- 休憩
- 0:49
- 合計
- 6:28
9/15 薬師岳小屋4:25-4:45薬師岳5:30-5:55鳳凰山(観音岳)6:00-アカヌケ沢の頭6:50-7:00地蔵ヶ岳7:15-鳳凰小屋7:45-燕頭山9:00-11:00御座石鉱泉
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
第1日 韮崎駅6:08(240円)6:21甲府駅7:00(山梨交通バス、1,420円)8:20夜叉神峠登山口 第2日 御座石鉱泉12:30(山梨中央交通バス、1,700円)13:10韮崎駅13:36(240円)13:48甲府駅14:00(中央高速バス、2,000円)新宿高速バスターミナル |
その他周辺情報 | 前泊地 「よろづや旅館」0551-22-0104 素泊り3,800円(ユニットバス付) 宿泊地 「薬師岳小屋」090-5561-1242 1泊夕食付7,000円 温泉 「御座石鉱泉」日帰り入浴1,100円 |
写真
感想
鳳凰三山を夜叉神峠から目指すルートは、高校時代に2度計画し、理由は忘れたがいずれも実行できなかった。当時、緻密な計画を立案することが楽しくて仕方ない自分と、コースタイムの半分で歩くことに喜びを見出す怖いもの知らずのもう一人の自分が、その単独行へ「私」を誘なっていた。そしてその山行は、南アルプスをこよなく愛していた尊敬すべき親友Sに対するオマージュでもあった。
当初は夜叉神からではなく韮崎からバスで入山しようとしていたため、韮崎駅付近で宿を探した。webで良い駅前旅館を見つけた。登山者に理解があり、遅い到着も早朝の出発にも対応してくれて素泊り3,800円。前泊の予約と共に山小屋の選択も行う。なるべく標高の高い場所からご来光の得られることが可能な小屋を予約した。
その「よろづや旅館」を5:50に出発、始発列車で甲府に向う。怖いくらい晴天、雲は全くなく、奥秩父の山々がはっきり見える。甲府7:00発の広河原行きバスは1台のみの運行だった。乗務員のコメントによると4時台、9時台は5台の編成だったようだが。途中、車窓から見た路上駐車の無法ぶりに辟易させられ、このことは後の下山ルートの選択に影響を与えることとなった。
夜叉神峠登山口からは、なだらかな道で始まる。日差しはやわらかく、風もない。徐々にペースを掴み、杖立峠を過ぎる頃には身体が軽くなった。渋滞もなく、前日ゆっくり眠れたせいかすこぶる調子が良い。予定では苺平で取るはずだった昼食休憩も南御室小屋まで延ばすことができた。小屋周辺はのどかで親しみの持てる空間と時間が広がっていた。いつになく食事を楽しみ、長居をしてしまいそうになる。
後ろ髪を引かれながら小屋を後にする。急登で始まる道に少し戸惑いながら進むと、やがて道端に神々しい石が現れ始めた。期待が高まり、休みたい気持ちを抑えながらなおも進むと森林限界に到達する。ハイマツと岩と砂とそしてお決まりのガス。そろそろ視界無しはやめにしてはどうだろうか、傍らの岩につぶやく。
諦めながら砂払岳を進むと急に眼前に美しいハイマツ原が開ける。そして煙と人の息吹。薬師岳小屋に着いたのだ。予定よりも2時間早いが、早速手続きをしよう。外観はこれまで写真で見てきたとおりだったが、室内は予想に反して広さを感じた。もっとも小屋番から「今日は二人で1枚の布団になっちゃうけどね」を聞かされたあとは、どんよりと室内の暗さが強まってしまったのだが。
荷物を置き、着替えたのちは、のんびりと小屋周辺を散策した。相変わらず眺望は得られない。それでも夕景を探して小屋を出たり入ったりしながら夕食の時間を待った。小屋名物のおでんを食べてからいよいよ覚悟を決めて布団に入る。明日も良い日であることを祈り、今を耐えます、、、されど耐え切れず夜中に一度深呼吸をしに外へ出ることになるのだが。
翌朝は4時起床、ほとんど眠れず。見上げれば満天の星、薬師岳山頂でのご来光を期して小屋を後にする。暗闇の中、ヘッドライトを頼りに1歩ずつ近づいてゆく。気温2度、すでに到着していた20代の好青年に教えられる。朝日はあの方向、大菩薩あたりから上がる、少しは私にも教えられることはある。東南方向に大きな影、たおやかなその姿は徐々に光を帯びて威風堂々と輝き出す。これまで山梨側の美しい富士を追ってきたが、間もなく集大成の瞬間が訪れる予感がしていた。
雲海に浮かぶその姿を目の当たりにしてこの1年の山行を振り返っていた。友の一言に触発され、自分らしさを取り戻すために何かを始めようと踠いていた時、或る人に山の素晴らしさを語りながらいつしか山上に身を置く自分を思い浮かべるようになっていた。それは遠き日々に思いを馳せながら、苦楽を共にしてきた友や親しき人々との語らいの始まりでもあった。週休1日の「仕事人」にとって月2回の山行など以前では考えられなかったはずなのに、いつしか何の迷いもなく山に向かうようになった。24回の山行は、少しは私を強くしてくれただろうか。
見るものすべてを謙虚に、そして感謝と慈愛を思い出させてくれる瞬間、美しき景(ひかり)に魅せられ時を忘れていた。朝陽に染まる山々がやがて本来の姿を現し始める頃、ようやく私はその場を離れることができた。観音岳を経て残る地蔵ヶ岳を視野に収める。三山の象徴、オベリスクは確かに不動の存在感を醸し出している。少し景色を楽しみながらゆっくり歩いてはどうか、いやいつもどおり1本早いバスに乗ろう、小さな葛藤をよそに、手足は休むことなく大きな推進力を産み出し続ける。
賽の河原からオベリスクを見上げていると、さきほどご来光を共に得た青年に出会う。彼はオベリスクに挑んだのちに青木鉱泉へと下るという。私は尾根道を行くことにした。この時点で広河原に下る選択肢は完全に消滅していた。前日の人と車の多さからできるだけ遠ざかりたかった。
御座石鉱泉へのおだやかな道は最も私に適したルートである、そう思えた前半に比べ、後半の延々と続く単調な急坂は、温泉嫌いの私を入浴へと導いた。バス到着まで1時間半、ようやく電波の通じた画面には呑気なメッセージやスタンプが満ちている。かけがえのない存在が人に必要なことを教えてくれたSを思い、私は静かに目を閉じた。
「想い出の山」写真&レポートコンテスト 「山行記録部門」 by モリパーク アウトドアヴィレッジ(MOV)
コメント
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多分あの方かな〜という心あたりはあります。
小屋やバスいろんなところで人が沢山でしたね(^^;
私も臨時が出ると思い込んでて座れませんでした(><
でもこの日同じ景色を共有出来て光栄です。
山に行くと自分自身を見つめなおす気持ちになりながら
気分がすがすがしくなりますよね。
ikajyuさん、メッセージをありがとうございます。久しぶりにキツイ一晩でしたが、翌朝のご来光や富士の姿で報われました。山ではまだまだ余裕がなくていつも「真剣勝負」なので、愛想悪くてすみません。またどこかでお会いできることを!
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