日向山 〜秋の砂浜の如き〜 A8
kimichin2
体力度について
- GPS
- 07:05
- 距離
- 17.5km
- 登り
- 1,143m
- 下り
- 1,134m
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- 山行
- 6:16
- 休憩
- 0:46
- 合計
- 7:02
| 天候 | 曇りのち雨 |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2015年04月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
電車 バス
復路 道の駅はくしゅう17:39（山交タウンコーチバス、850円）18:13韮崎駅18:36（240円）18:49甲府駅18:56（特急かいじ、トクだ値2,670円）20:35新宿駅 |
| コース状況／ 危険箇所等 |
道の駅から矢立石駐車場までは車道歩きですが、車組が上がった後なのでそれほど気になりません。途中あまりの大回りに、仕事道でショートカットしました。(途中で道無くなります。読図必要です) 錦滝から雁ヶ原への道は、「ロープ場の連続する急登」で、矢立石の注意喚起はハイキング気分で安易に行くな、ということなのでしょう。途中はしご1個所。下りに使う道ではありません。強い降雨時も回避すべきです。 |
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感想
山上のビーチに魅かれ、動きを止めた流沙の如き姿に魅せられる。久しぶりに夜桜を鑑賞したせいか、このところ少し浮かれている、そんな気がしていた。引き締めなくてはならない。雪の残る稜線は歩けないが、あえて惑わされる場所で揺るぎないものを得なければならない。
公共交通機関のあまりの不便さ、駐車場、収容台数の多さ、9ヶ月ぶりに車で向かうことも考えたが、復路の渋滞と特急車内での安眠を思い、いつもどおり若者たちの眠る列車に乗った。個の季節が、青色の春から朱色の夏に変わって久しいが、山を忘れ夏も冬もリゾート地にいた頃、彼らのように、眠るために昼夜を過ごしていた。彼らの姿に、あの頃の自分を重ねそうになったとき、最初の乗換駅に着いた。
今日のアプローチは長い。自宅を出てから歩き始めるまで4時間あまりを費やす。帰りのバスは1便だけ、選択の余地はない。ならば滞在時間8時間を十分に満喫しよう。計画どおりに歩けば、道の駅に戻り、ゆっくり時間をかけて美味しい水を味わえる。
八王子から韮崎までは、或る他愛もない理由から気の遠くなるような時間になった。眠る以外に何もできず、ボックス席で固まっていた。タウンコーチバス、予想に反し大型バスだった。乗客は2名。もう一人の登山者は牧の原で降りた。運転手に礼を言って降車、空のバスを見送る、もう大分慣れてきた。
道の駅はくしゅうから心穏やかに歩き始める。しばらくは自家用車が後ろから追い抜いてゆくが、尾白川渓谷駐車場への分岐を過ぎると、ほとんど車の通らない車道を歩ける。眼前には、まだ雪の残る美しい山々が屏風絵のように広がる。鳳凰三山、アサヨ峰、黒戸山、甲斐駒ヶ岳、鋸岳、大岩山そして日向山。青空が見えなくてもいい、このまま遠望叶う天候のままでいてほしい。だが、絶大な信頼を寄せる「てんきとくらす」の傘マークが脳裏を過ぎる。
やがて右手に現れる天満宮で登山の安全を祈願し、運命の分岐点に到着する。進むべき道に悩んだ今回最初のポイントである。少しでも早く登山口に到達したい、通行量の多い車道を歩きたくない、結果、静かでも紆余曲折の車道を選んだ。ウグイスの声が心地よい。あまりの迂回ぶりに、作業道に誘われる。ショートカットに味を占め、なおも続けようとしたが、密な等高線に嫌な予感を覚え、潔く林道に復帰した。
出発してから1時間、もうぱらついてきた。傘を差す。やはり車道歩きは稼げる。コースタイム2時間のうち30分を削減し、矢立石登山口に着く。今回のターニングポイントを迎えた。或る人の辿った道を行きたかったが、雨足は強くなる一方であり、途中後悔しないとも限らない。傘をレインハット、レインウェアに替えながら、足を滑らした姿を思い浮かべる。けれども数分後、導かれるように錦滝に向かって歩いていた。
錦滝の四阿で滝を見ている余裕はなく、ストックを仕舞い、いきなり始まる岩場や急坂の登りに神経を集中する。鎖場、ロープ場、梯子、次第に楽しくなってきた。久しぶりに思いきり全身を使って動いた。一方通行のはずだが、梯子で、下る3名とすれ違う。尾根道に出ると途端に疲れを意識し始める。鞍掛山が左手に大きく聳えていた。
雁ヶ原への最後の登りは、キックステップで休み休み進む、地固める雨の優しさを感じながら。息も絶え絶えに登り詰め、真っ先に駒ヶ岳方面を見る。当然のごとく雄姿は望めなかった。山頂を目指し、すぐに歩き始める。少し登ってから振り返ると、先ほどまで見上げていた鞍掛山と対峙した。やがて以前からその場に立つことを望んできたトラバースポイントが見えてきた。ゆっくりと、嬉しさを噛み締めるように見下ろし、渡った。
日向山には、雁ヶ原を往復した団体がいた。雨の中、昼食を取る。時折強い風が吹き渡る。いつしかそこには私だけがいた。とても静かな、夏の終わりの砂浜に佇むような時間。魅せられ引き込まれそうになる砂の斜面。見るべきものは見た。惑いを振り切り、ようやくそこを後にする。
樹林帯の緩やかな道を下る。雨は降り続けていたが、流れるほどではない。油断していると、せっかく納めたはずのものたちがあふれ出てくる。登山口から先は意識して速度を増した。神社の前を知らぬ間に通り過ぎ、尾白川の駐車場へ。閑散とするその中で、1台のパトカーが目に留まった。前日起こった出来事を全く知らなかった私は、そのまま歩き続けた。
雨は上がった。西の空を見つめる。虹はなかった。桜たちを見ながら今度はゆっくりと歩く。天満宮で下山の報告と感謝の気持ちを表したのち、レインウェアを脱いだ。機内モードを解除したスマートフォンに、1通のメッセージが届いた。予期せぬそれに、予定どおりのルートを進めたこと、目的を遂げたこと以上に嬉しさを感じていた。
道の駅で期待どおりの美味しい水を飲む。雲は散り始めていた。姿を現した南アルプスの山々を見つめ、ふと思った。人はどうして歳を重ねると臆病になるのだろう。清々しい空気を感じながら返す言葉を選んでいた。
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kimichin様
おはようございます｡
雨の中本当におつかれさまでした｡
急坂､鎖場に､ロープにハシゴに壁､しかも雨で滑りそうだし､恐そうです｡御無事で何よりでした｡一方通行ということは､それだけ危険な箇所ということなのでしょう｡
頂上は砂なのですね｡最初粘土質の土なのかなあと思いました｡確かに斜面に吸い込まれそうです｡滑りたい気持ちになりました｡
｢今日の光と影｣ですが､桜って暗い中でも薄い光を放っているようで､そこだけ少し明るくなります｡しかし､明るすぎないところがいいですよね｡
｢てんきとくらす｣は本当に抜群の予報です｡今シーズンスキー場の天気も風の予報を含めてかなりの確率で予報通りでした｡
来週こそはお天気に恵まれて楽しい山行になりますように!!
reochi19様
以前から行ってみたいと思っていました。車を使わずに日帰りで行けるよう計画しましたが、雨のせいで時間を余らせることなく、人気の山でも静かな時間を過ごせました。
錦滝からの登りは事前の情報でさんざん脅かされていましたが、久しぶりに山に登っている気がして楽しいひとときでした。体力も回復したことを実感できました。（山頂直下では足をとられて倒れそうでしたが）
それにしても防水スマホは便利です。従来はカメラに気を使って、雨天時には写真を撮れなかったのに、近ごろは凍らなければ大抵問題ないのですから。
これからも過信せず十分気をつけて登るつもりです。ありがとうございます。
楽しい山行を！
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