八紘嶺-希望峰-七面山、身延山 〜安倍奥、そして希望の富士〜 S4
- GPS
- 27:24
- 距離
- 27.6km
- 登り
- 2,673m
- 下り
- 3,286m
コースタイム
- 山行
- 8:49
- 休憩
- 0:23
- 合計
- 9:12
- 山行
- 5:07
- 休憩
- 1:01
- 合計
- 6:08
第2日 春木屋別館(羽衣) 6:10−赤沢集落 6:50−感井坊 8:30−9:10 身延山奥ノ院、北展望台、奥之院駅 10:10−丈六堂 11:10−久遠寺 11:40−三門 11:50−12:15 身延山BS
天候 | 第1日晴れ、第2日曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
復路 身延山BS 13:10(中央高速バス、2,900円)17:55(渋滞により1時間15分延着) 新宿高速バスターミナル |
コース状況/ 危険箇所等 |
富士見台〜八絋嶺 ロープ場、ガレ場のトラバース数ヶ所、晴天時問題なし。 |
その他周辺情報 | 春木屋別館(羽衣) 素泊5,400円 0556-45-2768 園林(身延山BS前) ブレンドコーヒー450円 |
写真
感想
5月4日の天候は、日を追うごとに、悲しくなるほど雨天であることが確実となり、とうとう70%の降水確率が報じられた時点で、逆ルートに切り替えることを考えた。結果、午前7時までに静岡駅に着くことを可能とする唯一の方法のあることがわかった。のちに、このルートを選ばせてくれた天気予報に感謝することとなるのだが。
新横浜から東海道新幹線始発列車に乗車する。ひかり493号はほぼ満席のようだった。割引のない特急券を買うことは避けたいが、時間を買うと思えば致し方ない。車窓から見える空は、薄曇りから青空の覗く晴天へ移りつつあった。名古屋に行く予定はないのでさすがに眠れなかったが、その40分間の高速移動は意外に長く感じられた。不思議と、いつものように逸る気持ちも無く、富士の姿を見ても昂揚しなかった。
静岡駅からいよいよ1時間50分のバス旅だ。乗客は15人足らず、市内を抜け、北へ北へと向かって行く。さすがは陸上運転最高峰の免許取得者、幅員4メートルの長い山道もその巡航性を変えることなく走らせる。若葉が眩しい。十枚山登山口で登山者2名が降車、安倍峠への入口で一人、赤水で一人、新田でもまた一人降車した。結局いつものように終着地まで乗車した登山者は私だけだった。梅ヶ島温泉には定刻どおり到着、自宅を出てから4時間が経過していた。コースタイム9時間半、暗くなる前には宿に着けるはずだ。
半袖のシャツで歩き始めたが、日差しは強く、瞬く間に発汗を意識しなければならなくなった。せせらぎや滝の音に耳を澄まし、静穏に近い風を受けながら高度を稼ぐ。今日は身体が軽いぞ、若葉の輝きに気を取られたほかはそれほど印象的ではない時間の末、稜線に到達した。そこが富士見台のはずだった。すでに諦めていたからろくに探そうともせずに、すぐに歩き始める。しばらくしてふと振り返ると、樹間から、そのたおやかな輪郭がぼんやりと見える。今日最初で最後の機会を逸してしまい、急に足取りが重い。
ロープ場、ガレ場を失意のまま通過する。東に連なる山々はすでにガスに包まれようとしていた。ピークを一つ乗越え、八紘嶺山頂に着いた。失意は無意識に歩みを早くする。予定よりも30分早い到着だった。南アルプス南部の山々がかろうじて見える。北方の山々に雲がかかるまでまだ時間がある。そう思い、パンと缶コーヒーを口にして、写真を撮ることなく出発した。
地形図どおり急な下りの後は、気持ちの良い平坦な尾根道。少し風が出てきた。予想どおり、予定どおり、静かな山歩き。おそらく七面山まで誰にも会わないだろう。しかし、その根拠のない余裕は、すぐに失せる。予想以上に続くアップダウンに、写真を撮るどころではない苦しい歩きを強いられる。
ところで先日いただいたネックゲイターを鉢巻にして、額上からの汗を吸収させる。すこぶる良い。今日も終始半袖の暑さだが、エアリズムにウールと化繊シャツのお蔭で一定以上の不快感は免れる。1864メートル、1964メートルの標高点を凌ぐといよいよその場所は近づく。
喜望峰、アフリカ大陸でキリマンジャロよりもカサブランカよりも訪ねてみたい場所。私は長い間、その岬について二つの誤解をしていた。一つはそこがアフリカ最南端であると信じていたこと。もう一つは、「ここに地終わり海始まる」の碑があると思っていたこと。この碑の実際に在る場所がポルトガル最西端のロカ岬であること、喜望峰の命名者がポルトガル人であったことから大きな思い込みが生じたのかもしれない。その、喜望峰と同じ読み方である、この希望峰に立つことが今回の登山の目的だった。原案でも、縦走困難となってもここ希望峰の折り返しをエスケープとしていた。
西側の安倍奥の山々を見晴し、南アルプス方向に目を凝らすのに飽きて、先刻のようにふと振り返ると木々の間に麗しきその姿があった。念じれば叶うのか。最早会うこともないと思っていた人に出会ったときのように、富士を見て希望を見出した。南西に見えた積乱雲が気になり縦走最後の区間を急ぐ。
元気を取り戻したのも束の間、七面山に着く頃にはカンフル剤の効果も薄れ、休むことを許さないほどの疲労を感じ始めていた。敬慎院に到着したのは予定どおりの午後4時、30分のアドバンテージは消費していた。下山でこれほど休むのは初めてかも知れない。丁目毎に設置されたベンチの誘惑に勝てない。体力を使い果たし気力のみで歩くがごとく、標高差1200メートルの表参道を無心で下った。
原案どおりここを上がって縦走し、復路のバス乗り継ぎでやきもきする計画は無謀だった。暗くなっても快く迎えてくれる宿の存在が、このコースには必要だった。羽衣の集落に着き、その宿を見つけられずに右往左往する。体力のみならず気力も途絶えそうになった頃、ようやくその引戸に手を掛けられた。
キャンセルが出て宿泊客は2名。部屋も清潔、8畳に一人、連休中奇跡とも言える一夜を過ごせた。このコースを歩くこと、当分遠慮したいが、この宿にはまた来たい。翌朝、快適な睡眠を経て身体は十分に休まったが、眠い。なんだかんだで前日2リットル弱の水分を補給したはずなのに、水を飲むために夜中に何度も目を覚ましたからだ。
丁重に礼を述べ、爽やかな朝、みのぶを目指して出発する。白糸の滝、沢音、小鳥の囀りのみが印象に残る静かな林道。非常食以外の食料、水を費やしたお蔭で、足取り軽くいつものペースで進む。前線の歩みは遅く、雲間に青空を覗かせていた。赤沢集落の石畳を上がり、身延山西参道へ。林道崩壊回避の山道に入ってから白装束の信者たち50名ほどとすれ違う。やがて朝のお勤めの声が聞こえなくなった頃、熊鈴の音のみが響く静けさと眼前に広がる若葉の美しさに、心洗われる思いをただ感じていた。
時間を持て余しながらゆっくり歩いたが、身延山奥ノ院には予定よりも早く到着した。南、西、北それぞれの展望台からは全く何も見えず。標高点を探したり、ロープウェー駅上のレストランで蕎麦を食べたりして1時間、もう留まる理由も無し、ようやく下山を開始した。ここも五十丁目まである参道。数えながら今日は軽やかに下りて行く。久遠寺が近づくと、今日が連休中であることを思いださせてくれた。三門をくぐり、門前町をゆっくり歩く。ソフトクリームを食べ、生ゆばを買い、高速バス乗場へ。ふと目に留まった喫茶店に入った。思いがけず美味しいコーヒーを飲みながら、忘れかけていた希望あるいは思い、それらが少し照れるほど甦ってくるのを感じていた。
kimichin様
こんにちは。
2日間の山行本当にお疲れ様でした。
お天気も初日は晴れ、2日目は曇りで雨にならず本当によかったです。
富士山の雪だいぶ溶けてしまったのでしょうか?それとも、見る角度によって違うのでしょうか?私自身には新鮮な富士山の姿でした。
初日は暑かったみたいですね。もうそろそろ熱中症に気をつけなくてはいけない季節になってきました。充分にお気をつけください。
次回もお天気に恵まれて楽しい山行になりますように!!
reochi19様
こんばんは。結局、計画とは逆のルートを進みましたが、本当に良かった。二日目、本降りにはならなかったのですが、縦走していたら風やガスに気落ちさせられたと思います。ただ、直前の計画変更は今後はしないよう心がけます。
夏が近づいてきました。富士山も夏の衣を纏いつつあります。reoch19様も単独行禁止令にめげず、十分な準備と体調管理で夏の山旅を楽しまれますよう。
kimichinさん はじめまして(*^^*)
近々、公共交通機関を利用して七面山と身延山に行く予定で
七面山を検索したらkimichinさんのレコをみつけました。
八紘嶺から七面山へ行くルートがあるんですね。
とても興味深く読ませていただきました。
八紘嶺は静かな山道のようですね。
一日目のCT9時間30分は私には無謀なので
希望峰から身延山を参考にさせていただいて計画をたてたいと思います。
tanamari様
長文をお読みいただき、ありがとうございます。今回の山行は、振り返るとあまりメリハリのない単調な印象が強いのですが、連休の人混みとは無縁の穏やかで静かな時間を過ごせました。
希望峰の往復を含めた七面山には北参道から登り、表参道経由で身延山へ向うルートでしょうか。山上で宿泊しご来光を得るのも良いですね。
修行やお勤めの方々が多くいらっしゃいますが、十分単独行の楽しめる山域です。ぜひ大人の落ち着いた山旅を!
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