爺ヶ岳-針ノ木岳 〜北への憧憬、そして回帰〜 A10
- GPS
- 31:18
- 距離
- 22.4km
- 登り
- 2,490m
- 下り
- 2,473m
コースタイム
- 山行
- 7:12
- 休憩
- 0:57
- 合計
- 8:09
- 山行
- 7:31
- 休憩
- 0:46
- 合計
- 8:17
4:50 扇沢駅 5:20 - 柏原新道登山口 5:30 - 8:40 種池山荘 8:55 - 9:40 爺ヶ岳南峰 10:00 - 10:30 種池山荘 11:00 - 12:40 岩小屋沢岳 12:55 - 13:30 新越山荘
第2日
新越山荘 4:05 - 鳴沢岳 4:50 - 赤沢岳 5:45 - 7:25 スバリ岳 7:30 - 8:15 針ノ木岳 8:30 - 9:05 針ノ木小屋 9:25 - 11:10 大沢小屋 11:15 - 12:25 扇沢駅
天候 | 第1日 雨 第2日 晴れ、基本は霧 |
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過去天気図(気象庁) | 2015年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
新宿高速バスターミナル 23:00(中央高速バス、ネット6,100円) 4:50 扇沢 第2日 扇沢 13:30(路線バス、1,360円) 14:05 信濃大町駅 14:13 - 15:15 松本駅 16:58 (スーパーあずさ28号、トクだ値4,480円) 19:43新宿駅 |
コース状況/ 危険箇所等 |
柏原新道 雨天でも全く問題ない、急登もない良い道。2か所雪渓あり。 爺が岳往復 直下のガレ場。 種池山荘〜新越山荘 数か所のやせ尾根。 新越山荘〜赤沢岳 数か所の岩場、やせ尾根。 赤沢岳〜針ノ木岳 スバリ岳、針ノ木岳への長い岩場。落石に要注意。 針ノ木岳〜扇沢 雪渓の融雪は進み、峠直下は夏道。雪渓上はアイゼン必要。コース外れるとシュルンドの危険あり。 |
その他周辺情報 | タツミ亭(洋食) 松本駅2分、公園通り沿、11:30〜22:00(土日祝) |
写真
感想
北アルプス、登山の素晴らしさを教えてくれた山々。表銀座を歩きながら、穂高を憧憬のまなざしで見つめていた。高校に進んでからは、より特別な場所となった。2年前、その山々に向かうこと、再びその稜線に立てるとは思えなかった。原点への回帰、嬉しさで胸いっぱいに出発した。
夜のしじまの中、それぞれの思いを乗せてバスは西へ北へと疾走する。長野道と別れ147号線を走る頃、雨音が強くなった。やはりスタートは雨か。大雪渓を登る右回りにするか、初日の行程を短くできる左回りにするか、直前まで迷っていたルートが決まった。
扇沢には約20分早く着いた。清々しい空気の中、雨具装着、準備を始める。駅にはテントが数張、駐車場に車は疎らだった。柏原新道入口に、登山相談所。素知らぬ顔で通り過ぎようとすると、呼び止められ登山届の提出を促される。念のため用意してきた計画書を渡し、逸る気持ちを抑えながらゆっくりと歩き始めた。期待どおり登山者は少なく静かな道、確かに歩きやすく夜行後の登り始めに適した道である。
小雨だが、体が温まるに連れ、何よりレインウェアを脱ぐことが最大の願いになった。果たして種池山荘に到着する頃、雨は上がった。厳しかった鉄砲坂を振り返る。3時間20分、休みなく歩いてきたせいか、かなりの疲労を感じていた。予報ではこの後好天が続く。風に身を任せる雲と、頂を雲に包まれた剣立山を眺めながら、のんびり爺ヶ岳の往復を楽しもう。
山頂でようやく腰を下ろした。風が心地よい。行動食を口にしながら予想以上の充実感を噛みしめていた。今日の行程は残り3時間、遅くとも14時には小屋に着ける、気持ちも体も軽かった。山荘前は多くの人で賑わっていた。ほとんどが鹿島槍を目指すのであろう。どこか静かな場所でコーヒーを味わいたい、念のため水を補給する。
出発して間もなく風が強まった。時折、霧に包まれる。花に目をやり、片側切れ落ちた道に注意しながら、気持ちの良い稜線を西へと進む。やがて岩小屋沢岳への登り、夜行疲れが出始めた。再び降り始めた雨の中、何度も足を止めながらも頂を目指す。風は収まり不気味なほど静かな時間、フードに当たる雨粒の音だけが響く。コーヒーを淹れている余裕はなかった。
新越乗越への下り坂、急に冷たい風が吹き始めた。自然に足が速まる。前方の霧が一瞬明るくなり、いつかの恐怖心が甦った。霧がさらに濃くなった頃、新越山荘が唐突に姿を現した。実に頼もしく映った。手続きを済ませてから遅めの昼食とコーヒー。安堵感からかいつもより美味かった。午睡、一人一組の布団は十分に疲れを癒してくれた。
午前4時すぎ、夜明けを待てずに山荘を後にする。計画より1時間早いスタートだったが、厚い雲に阻まれ、残念ながらご来光は得られなかった。幸い風は時折吹きすさぶ程度、体を流される心配は無い。やがて周囲が明るくなった頃、最初の岩場に迎えられる。高度感は無く、スタンスも豊富、楽しみながら登った。いつしか風は強まり、霧の動きもめまぐるしい。万一の突風に備え、風上側に身を置く。刻々と姿を変える稜線を眺めながら、風が雲も霧も吹き飛ばしてくれることを期待した。
確かに静かなコース、小屋を出てから誰にも会っていない。鳴沢岳を経て赤沢岳に着く頃には青空が広がっていた。この連峰が作り出す影の中、眼下に映る黒部湖の水面が美しい。もう少し360度の眺望を楽しみたかったが、これからの岩場に備え、5分ほどの滞在で出発する。前方にスバリ岳が迫る。くっきりと陰影深いその姿に、毅然と構える岩峰の厳格さが窺えた。
出発してからおよそ3時間あまり、いよいよその岩場にとりかかる。疲労は感じていない。ヘルメットを着用している人も多く、上部からの落石のみならず、脆く浮石だらけの足場にも十分気を遣わなければならない。幸い、行き交う人の少なさに、落ち着いてスタンスを選ぶことができた。スバリ岳、これまで山頂部は雲に隠れていたが、満足のゆく眺望が得られた。そして目的地、針ノ木岳がようやくその姿を現す。
岩場を攀じ登るとかなり急勾配のガレ場が待っていた。最後の登りを味わいながら進む。山頂部は広く休憩にも適していたが、せっかく1時間早い到達、大雪渓で思いがけず時間を費やすことを考慮して下りることにした。
ほどなく針ノ木小屋。のどを潤し、スパッツを装着、長い下りに備える。峠直下には夏道が用意されていた。急勾配の雪渓を通らず、途中までアイゼン無しで下りられたが、数か所トラバースしながらその必要性を十分に感じていた。雪渓上に移る場所で迷わず装着、やはりこの安心感と効率良い足運びには欠かせない。問題は風無く照り返しによる蒸し暑さ。登る多くの人とすれ違ったが、その烈しい疲労と息苦しさは想像に難くない。
やがて雪渓を離れ夏道を行く。雪渓上でかなり神経を使ったためか、何のことは無い登山道が、飽きるほど長く感じられた。大沢小屋は無料の休憩所になっており、感謝しながら冷たい水で顔を洗った。ガレ場、沢を通過したのち、林道を数度横切りながら扇沢に近づく。ここを登り、雪渓を遡ること、恐らくそれだけで疲労困憊、その後の縦走は叶わなかったかもしれない。多くの人が選ぶ左回りが正解であったことを大いに感じていた。
扇沢に到着してからは、着替えその他でバス待ち1時間は瞬く間に過ぎた。計画よりも1本早いバスと列車に乗れたため、松本では1時間半の時間が得られた。素晴らしい山旅だった。うだるような暑さの中、駅近くのその店を目指した。自ら聖域と定めていたあの頃、上高地から共にその先へ踏み出すことを躊躇っていた。碧き香り、懐かしいレストランで思い出さずにはいられなかった。
コメント
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kimichin様
おはようございます。
1泊2日の山行本当にお疲れ様でした。
グラフを拝見すると、3,000mに近い標高の山々の縦走をされたのですね!!
雲の合間から見える青空の青色が下界からの見える色と違います。
うまく表現できませんが、明るいけれど、深みのある感じです。
それから、山肌に写る雲の影、標高が高い山の上からしか見えない世界です!!
とても楽しませていただきました。
雷にあわなくて本当によかったです。
暑い折、熱中症には充分お気をつけください。
次回も静かで楽しい山行になりますように!!
おはようございます。
2年前から毎回ステップアップを意識して、何かにチャレンジしながら登ってきましたが、
今回は今の私にとって大きな「挑戦」でした。
完遂できたこと、嬉しいと同時に、まだまだ行けると少しだけ自信を持てました。
これからも慎重に、過信することなく、山に向かいたいと思っています。
無理せず楽しみましょう、素晴らしい山旅を。
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