金精峠-奥白根山-湯元 〜霜降、心凪ぐとき〜 B29
- GPS
- 08:47
- 距離
- 11.5km
- 登り
- 1,197m
- 下り
- 1,561m
コースタイム
- 山行
- 7:32
- 休憩
- 1:16
- 合計
- 8:48
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
当日 金精峠入口5:15着 湯元温泉14:30発(東武バス、1,700円、いろは坂渋滞)日光駅16:25着、東武日光駅17:02発(臨時特急日光64号、4,000円、えきねっとで予約)新宿駅19:09着 |
コース状況/ 危険箇所等 |
金精峠入口〜金精山 崩壊地、梯子、ロープなど盛り沢山。ナメてると落ちる。 金精山〜前白根山 下り、目印あるが踏み跡多く迷いやすい。尾根道を外さない。多少のアップダウンは避けられないが、眺望よく、気持ちのよい稜線歩き。 前白根山〜奥白根山 こちらのコース、岩場少なく歩きやすい。南面ゆえこの季節でも汗ばむ。 前白根山〜湯元温泉 滑り止めのガラ敷き、倒木だらけの急坂。荒れた道は疲れた体に堪える。 |
その他周辺情報 | 休暇村日光湯元 日帰り温泉900円(12時〜15時)、露天風呂もあり綺麗、タオルの貸出、寛げるスペースも有る。 湯元温泉には外15か所以上の日帰り温泉がある。 |
写真
感想
霜降、心凪ぐとき
日光、そこは特別な場所だった。バブルの喧騒が収まっても尚、昂る心を静めるために訪れた。湖の畔に立ち、木立に注ぐ光を感じ、静謐な世界へといざなう径を歩く。すでに登山を諦めていた頃でもあった。山々の姿は、大らかな草原の形作る風景の一部にすぎなかった。ゆっくりと心の変化を確かめながら街へのドアを開ける。急速に回復してゆくものを感じながら車を走らせていた。
最も好きな季節、晩秋を前にして選んだ山は奥白根山。コースの選択に十分迷った結果、1週間前に今期最後の夜行登山バスを予約した。金曜夜発のため、土曜の仕事を日曜に回した。相変わらず狭い車内には予想に反して満員の乗客、眠れない環境が整っている。都庁を15分遅れで出発したバスは、15分遅れて金精峠入口に着いた。
夜明け前の金精峠入口を出発、まずは峠を目指す。ヘッドランプが不要となった頃、峠に着いた。振り返ると大真名子山から今にも朝陽が昇ろうとしていた。思いがけなく出会った美しさにしばし見とれる。山行記録によると、今日最初のピークへは幾つかの梯子やロープの助けが必要とあった。登り甲斐のある道を進み、やがて金精山に到達する頃には風速15メートル程度の強風に晒されていた。予定どおり無休息の通過をしたのち、踏み跡多い樹林帯に入る。時折ルートを外しながら鞍部を通過、徐々に高度を上げて行った。
その決して美しいとは言えない山容は、五色沼の清らかさと対比されるかのように眼前に現れる。五色山から前白根山に至る稜線から望むうちに、次第に堂々としたその姿に圧倒され始めていた。広々とした頂を持ち、360度の眺望が得られる静かな山、前白根山には長く滞在したかったが、美しい青空を望める間に奥白根山に向かうことにする。
稜線を離れ避難小屋まで下り、五色沼からの道を合わせ、最後の登りにかかる。緩やかな斜面はいつしか岩場の連続する急坂に変わり、傾斜角を増すに連れ青空の占める割合は確実に減少してゆく。やがて立ちどまり見上げることに飽きた頃、眼前の空は瞬く間に大きさを取り戻した。目的地を右手に確認したのち、神社経由で近づく道を進む。
百名山の山頂は、例のごとく賑わっていた。午前9時18分、様々な光景に出会ったが、時間はそれほど経過していなかった。それなりの達成感を得て、僅かな滞在であとにする。復路は地図にない道を選んだ。ショートカット・ルートの方が岩場を通らず明らかに歩きやすい。
稜線の道へ復帰した地点で、初めて腰を下ろす。気分が良かった。遠く上州の山々を望みながらコーヒーを淹れ、美味しいパンを食す。風は止み、穏やかな光が降り注いでいた。自然に感謝し、心凪ぐときを感じていた。
そろそろ前白根に戻り、湯元までの長い下りに備えなければならない。避難小屋までゆっくりと下り始めた。前白根への登り返し、予想どおり厳しい。再び山頂に立つ。山頂には3名の登山者しか見当たらず、奥白根山の喧騒を十分に忘れさせてくれた。天狗平を通過する頃、いつもとは異なる嫌な疲労感を覚えていた。体のコントロールができず何度もよろける。滑り止めのガラ、倒木の連続、岩の急坂、楽しめるはずの下りが、ただ転倒に気を遣うだけの退屈な行為と化していた。次々と道を譲りながら、のどを潤すことと渋滞への不安とが交互に脳裏を過った。
やがて湯元のスキー場が目に入り、季節外れの強い陽射しの下、無意識に歩を進める。そして無意識に汗を流し着替えられる場所を探し求めていた。束の間の、僅か15分の時間を惜しみながらバスターミナルへと急ぐ。事前に聞いていたバス会社の言葉どおり、いろは坂渋滞によりダイヤは当然のごとく乱れていた。湯あがりの爽やかさが無ければ車中の時間はとても長く感じられたことだろう。身動きのままならない混雑による遅れにも、全く反応せず増発しないバス会社に疑問を覚えた。それでも日光駅への時間は通常の2倍ほどで済み、発券後、予約していた特急列車に乗車するため東武日光駅まで戻る。
これほど快適に過ごせる時間になるとは予想もしていなかった。これほど下山後の時間が愛おしく感じられるとは思いもよらなかった。シートに身を預け、日常とは全く異なる時間を過ごした余韻に浸りながら、今も変わらず特別だった場所に感謝した。
kimichin様
こんにちは。
おつかれさまでした。
今回お写真を拝見して、まず思ったことは、雲があることによって、朝日の光も、稜線も空の青さも引き立つのだなあということでした。雲の形が時間毎に様々に変化する様子も、お山としっくりなじんでいて、なんとなくいい感じだなあとのんびりした気持ちになりました。
お山でいただく、お気に入りにパンって通常の10倍以上おいしいと思います。
私も、家の近くのパン屋さんのマドレーヌを、山頂で水筒の紅茶と一緒にいただくことが、お山の楽しみのひとつです。
木枯らし1号も吹いて、季節はだんだん冬に向かっています。
kimichinさんのレコを拝見していると、春夏秋冬のそれぞれの楽しみ方を満喫されていらっしゃいます。とっても素敵です。
次回もお天気に恵まれて楽しい山行になりますように。
reochi19様
さすが目のつけどころを心得ていらっしゃいますね。前回から雲を意識して撮るようにしています。この季節、青空と、刻々と姿を変える雲の対比が、心を豊かにしてくれるような気がします。引き立て役ではなくむしろ主役なのです。
コーヒーを飲みながらボーッと空を眺めていました。何も考えず、なににも関わらない時間を大切にしていました。きっとreochi19様にもそんな時間の必要なときがありますよね。
心癒される山歩きを楽しまれますよう、雪だよりが届く頃を楽しみに。
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