帯那山-積翠寺 〜グレーアンドブルー〜 A16
- GPS
- 07:08
- 距離
- 19.5km
- 登り
- 1,090m
- 下り
- 1,337m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
甲府駅発 6:22 -(240円) 山梨市駅着6:36,発7:00 (山梨市営バス,100円) 山口BS着 7:25 武田神社BS 15:00 (山梨交通バス,190円) 甲府駅着 15:15,発16:10〜 |
コース状況/ 危険箇所等 |
急坂無し、岩場無し、そして標識無し。積雪もあり、何度もルートに悩んだ。極めつけは、積翠寺北側の分譲地、彷徨った。 |
その他周辺情報 | 甲府駅セレオ5Fの鉄板焼き屋「1008」 年末に食したステーキセットを忘れられず、再度訪ねた。。ミディアムレアの甲州牛、やはり美味かった。 |
写真
感想
夜明け前の甲府駅前、路面が濡れていた。何の疑問も持たずエスカレーターに乗る。およそ1時間前、いつまで待ってもお湯の出ないシャワーに憤り、フロントにコールした。「蛇口の方を回してしばらく待ってください」呑気な応えが返ってきた。思えば、これがハプニング続きの一日の始まりだった。
山梨市駅に着き、自宅からどんなに早い列車に乗っても間に合わないバスを待つ。6時56分、2分遅れで到着したバスの前面には「戸市」とは異なる文字が表示されていた。ドアが開き運転手に尋ねられた。「お客さんどこまで?今朝の雪で戸市までは行けないよ」瞬間、冷たい風がバスとの間を吹き抜けた。ようやく濡れた路面の意味が理解できた。未明から今朝にかけて相当量の降雪があったのだと。
車中で計画の変更を模索した。「山口」下車とすると、登山口まで約1時間余計にかかる。多少の積雪を予想してコースタイムどおりに時間設定をしていたが、出遅れに加えて多少でない積雪を考慮すると、温泉に浸かる時間は無いに等しい。用意していた2本のエスケープルートを迷いながら歩き始める。
果たして運転手の言葉どおり、凍結した路面が現れた。上りはよくとも、ここを一人下るのは心細いであろう。そもそも市民のための市営バスである。無理はすまい、などとつまらないことを考えていると、いつしか美しい霧氷たちに囲まれていた。この標高で、これだけの光景に出会えるとは思いもよらなかった。見とれて幾度も転倒しそうになった。そして見とれながら今回も登山口を逃した。
急ぎ引返し、雪深そうな道を前にして、気を引き締める。僅かでも浮力を得ることを期待してアイゼンを着ける。数日前のトレースがせめてもの救いだった。ロングスパッツの半分程度の積雪、ラッセルによる消耗は心配なさそうだった。静かにゆっくりと、粉雪の感触を確かめながら歩き始める。
緩やかに上る一本道。脇に気を取られ、空を仰ぎ見、何かを求めて振り返る。まるで雪遊びをする子供のように、疲れも喉の渇きも感じることはなかった。木々の上に積もった雪が、微風に誘われ舞い散る。穏やかで閑さの染み渡るひとときだった。
山頂付近で一気に視界が開ける。思いがけず大きなその姿にため息が出る。たなびく雲と陽の光が一層その美しさを引き立てる。富士山の存在は、何物にも代え難い。しばらく直立したまま、見とれていた。帯那山、「年末三日連続日帰り登山」の中日に小楢山と迷った山、これほど素晴らしい眺望に出会えるとは。
奥帯那山への往復後、昼食を取る。すでに、雲は富士の頂に絡みついていた。それにしても空が青い。コーヒーを味わった後は空ばかり見ていた。もはや無理をして長時間、長距離を歩く気はしない。積翠寺へ下ろう。そして再び甲府へ。お湯の出ないシャワーヘッドが目の前を過った。
緩やかな下り基調の道が続く。眼前に南アルプスが広がっていた。冠雪叶った頂の連なりは、甲斐駒ヶ岳で美しく達する。ここでもしばらく動くことができなかった。
やがて、山頂から続いていた真新しいトレースは、不意に道なき道を選ぶ。山頂で入れ替わり、先行していた地元登山者の付けるトレースは、こののちも大いに予想を裏切った。木々の間を縦横無尽に進んでゆく。アイゼンの刃が、時折雪の無い急斜面で空を切る。車道を横切る頃、ようやく道らしき道へといざなわれた。
いつしか沢沿いの道を歩んでいた。こんな日は、尾根道よりも安全かつ迷いなく、確実にペースを維持できるのだろう。十分に路面が露わになる少し前、アイゼンを外した。ほどなく神社の傍らを通過する。トレースは直進していたが、「2万5千」に従い左へ。まさに運命の分かれ道。
民家が数軒、程よい間隔を置いて建ち並んでいた。まるで隠れ里のような不思議な場所。そして一瞬にして迷った。登山道が見つからない。誰かに訊こうとしたものの、家々に人の気配は無い。陽の光のまぶしさが余計に不安を掻き立てた。上り下りを繰り返したのち、林道を上がり、尾根に向かう。
こんな場面でも、迷ったら登るべし、の教訓が生きている。判然としない、廃道らしき場所、枝を掻き分け進む。ようやく登山道に復帰した。ふと横を見ると先ほどの民家。狐につままれたのか。僅かなめまいを感じながら、自信を持って「正式な道」を歩む。やがて穴口峠と称される分岐点に到達、標識の弱々しさに一抹の不安を感じたが、振り払い、積翠寺温泉方面へ下る。
然もあらん。道は微かな踏み跡へ、そして消えた。仕方がない。その方向を目指し駆け下りる。沢を渡り林道に出る頃、ようやく疲れを感じた。久しぶりに夢中になれる下山路だった。
それからの車道歩き4キロは、達した後のけだるさを感じつつ、いつものペースで歩いた。最初に現れた自販機前で喉を潤し、スパッツを脱ぎ、ストックを仕舞った。まもなく街に、いや城下に入る。館跡をかすめ、観光客で賑わう武田神社へ。ベンチに座り、靴紐を緩める。上りの穏やかさ、下りの荒々しさ、山歩きの醍醐味を十分に味わった。充たされた時間に感謝し、そして大きくため息をついた。
コメント
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kimichin2さん、こんばんは!
たしか、帯那山は山頂近くまで車で乗り入れ可能なので、積雪期でなければ登頂は難しくない山との認識がありました。しかし車利用の単なるピークハントではいささか味気なく、この山の本当のよさは公共交通機関を使っておこなうべきと考え、いろいろ検討しましたが、なにぶんにもアプローチが厳しく、来訪できずに今日に至っております。
試行錯誤のアプローチの末での登頂後、富士山 が見えたときはそれまでの疲れがいっぺんに吹き飛んだのでは・・・?
積翠寺から甲府駅までは、私も歩いたことがありますが、帯那山から積翠寺まで出るのが大変だったのですね?
お疲れ様でした!
toshishunさん
帯那山は頂上近くまで車で上がれるというお手軽なイメージが有りますが、登山口から歩いても急坂なく比較的楽に登れる山です。
当初、日帰りで考えていましたので逆ルートの積翠寺から登る計画だったのですが、手応えを求めるならこちらを選ぶべきでしょう。
いずれにしろ公共交通を利用するのであれば、冬の通行止めシーズンが眺望もよく好ましいと思います。
これからも安全で良い旅を。
kimichin2様
おはようございます。
レコを拝見するのがすっかり遅くなってしまい申し訳ありません。
まさに、冬の特徴が表れた山行だったようにお見受けしました。
無事の下山なによりでした。
晴れた日の冬の青空は本当に美しいです。
そこに映える雪の白さ、富士山の姿は言葉になりません!!
冬のお山の楽しみのひとつだなあと、先日高尾山に行った時に思いました。
そして、積雪の怖さ。ブラックアイスバーンに圧雪アイスバーン、バスは、事故を防ぐ為には行く先変更もやむを得ないのかもしれません……
しかし、アクシデントにも冷静に御対応されていらっしゃるkimichin2様はさすがです。
私ならきっと パッキャラマオパッキャラマオパオパオパパパ を歌いながら、呆然と途方に暮れていると思います。(いつも困った時には自然と口をついて出てしまう歌なのです。)
雪が降ると、同じ場所も全く違う景色になってしまいますね。
冬の怖さだなあと思います。
次回の山行がお天気に恵まれて楽しいひとときになりますように!!
くれぐれもお怪我なさらぬよう充分お気をつけください。
reochi19様
日々の繁雑さに麻痺して、もう十日も経っていると思えませんが、まだあの5軒のみの分譲地で迷ったことが頭から離れません。山中でもなく、街中でもなく、別荘地でもなく道を失ったのは初めての経験でした。もう少しで、数時間前に見た富士の姿を、忘れるところでした。
下山ルートの迷いも含めて、整備された登山道ばかり歩いていると「野性」を失いそうになります。たまには「オフコース」でいかなければ。私はテンパったとき、「こんなことは今までなかった。♫」や「ありゃりゃんこりゃりゃん、おへそのねーじが」とか歌って気を紛らわしています。
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